栗売社(新本)

  • ¥ 2,000
  • 井坂洋子詩集 月は空にのまれる前に 地球の円天井を白く梳いた 無人となった地帯は南北にわたって長く 美容室の床に 誰かの髪の房が落ちている 麻の帽子の登頂のへこみに 死の 影がたまっている きれいに剃りあげられた少年の耳のうらにも 影はたまるがまだ充分ではなく 裏手の雑草の メビウスの輪のような細長い葉うら カーブする舗装路にも湧いて いつも思うことだが バスに揺られるいくつかの頭と 里芋の葉は 音符のようだ 根と切り離されて リズムをとっている 椅子に座ったまま うたた寝するひとの風景にふくまれる 束の間の無音……この七月 呪いは解かれたのだろうか ながい髪のなおも伸びるのを忘れて (「七月のひと房」より) 第35回現代詩花椿賞受賞詩集 著者 井坂洋子 発行所 栗売社 発行日 2017年1月25日 B6判 本文105ページ

  • ¥ 2,000
  • 鏡順子詩集  職員の通用門を出ていくと、小さい男がへいに寄りか かって立っている。笑っている。歩き出すと、指が一 本、すっときて首をさわった。早足で追い越していき、 ずっと先の方で、見えなくなった。  私は、のろのろと歩いている。  恋人の顔や、からだつきがうかんで、すぐにとぎれ、 どうでもよくなってしまう。  男の顔がにやりと笑って、横にきている。ポケットに 手を入れ、歩調をあわせてついてくる。  青色の清掃車から人がおりて作業をしている。その方 へ、私は歩いていく。  袋や箱をひきずる音が、頭の中で、する。少しもかわ らず、ゆっくりと歩いているらしい。男の手が、べたり と肩にのっている。 (「手」より) 著者 鏡順子 発行所 栗売社 発行日 2017年7月9日 B6判 本文84ページ

  • ¥ 2,000
  • 中神英子詩集    沼 夜になると輝き始める 小さな沼があった 月光に照らされ白い花を 無数に咲かせた木が映っている    のはら 雨のようなものが降り注ぐのはらで あのひとに出会った うっすらと紡げば白いレースになるようなもの さわさわと降り注ぐ みどりの萌えるのはらには この世の飾りのような野の花も咲いていた あのひとは私に笑い 私もあのひとに微笑んだ でも 雨のようなもののせいで けっして近くには行けなかった さわさわさわさわ音があるように降り注ぐ 見渡す限りまるで祝祭とでも言いたい優しさ  白き花ここだく下に散り落ちる  夢に見し木の名前を知らず 何に見とれていたのだろう 私は あのひとはやがて鹿になって やわらかくふっさりと煙ったのはらの遠くへ 駆けて行ってしまった もう一度見渡すと そこにあったはずののはらは一変 世界はそんな無限を当然のように抱いていた 目前には照り枯れた水気のない草が うなだれて広がっているばかり 陽射しが痛いように突き刺さる 私がここに現れたのは間違いなのだというように もうあの遠くを越えなければ近寄れない そうしなければ何も解けない 私は何だろう 震えて目を閉じる (「夢に見し木の名前を知らず」より) 著者 中神英子 発行所 栗売社 発行日 2017年7月1日 B6判 本文103ページ

  • ¥ 1,000
  • 高橋千尋、佐々木安美、井坂洋子(敬称略)が同人として参加している不定期刊行の詩誌です。 小さな栞がついています。 発行所 栗売社 B6版

  • ¥ 500
  • 高橋千尋、佐々木安美、井坂洋子(敬称略)が同人として参加している不定期刊行の詩誌です。 それぞれの号に小さな栞がついています。栞については画像にてご確認いただけます。 発行所 栗売社