作品集

  • ¥ 1,980
  • 黙示し隠る[画と文]。群を抜く泥濘の中を抜け あなたは□型・○型・△型のヒントを孕む「芸術のルール」を発見するだろう。 栞・阿木津英/小池昌代/宗近真一郎/四元康祐 高貴にして、卑俗、卑俗にして、高貴。これが倉本修と最初に会ったときの印象であった。 そして奇妙なことに(と言うべきだろうか)、それがこの散文集を読んだあとの印象でもあった。 文は人なり、人は文なり、と言うべきであろうか。(吉田文憲) 26 子どもの風景 [The landscape of the child] よし、という声が聞こえる。かれは紐を引っ張った。その紐が言う。 わたしは息の吸い方を知らない。 わたしは息の吐き方を知らない。 わたしはわたしを支えるべき、なにもかもを知らないのだ。 紐曰く、そも「わたし」とは何なのだ?  あらかじめ設定された張力の限界を超えたとき、かれはひきち切れ「息の止め方」をはじめて知るのだろう。  子どもらは、猿にしか興味を示さない。猿に導かれ立派な猿に育つまでの一本の川。その川筋に添うように流れ刻される幾重の轍がみえる…遊戯の跡、病みの跡、戦慄の跡、名をもたない多くの痕跡がある。 喉頭の痛みゆえに、口を噤む猿たちのなんという愛おしさよ。  「わたしが42年前に受け取った手紙を再び開く気になったのは、不思議な羽根つき猿を見たからです。恐ろしく危険なその生き物は、ばらばらになることで一瞬にして闇に消えてゆきました。それが何なのか、わたしには推し測ることが出来ないのです」アルフレッドは述懐する。  歳月をかけたちいさな川は大河と合流する。流され、沈んでいった羽根つき猿の残骸は、其処此処に浮かび上がり漸く光りを得る。それらを手にとり、かれは河を憎み涙し、そして嘔吐するだろう。  わたしはそろそろ此処を去ろうと思う。羽根をもたない息子と二人。  昊は笑って見送ってくれるだろう。 著者 倉本修 発行所 七月堂 発行日 2020年5月30日 A5判変型 87ページ