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ハルシネーション【新本】
¥1,980
草間小鳥子第3詩集 草間小鳥子は誰よりも世界に向き合っている。それがたとえ事後の幻影的現実(ハルシネーション)であろうと、その詩的変容を夢見てやまないのだ。 ――野村喜和夫 生成AIが普及し、ディープフェイクなどが日常に侵入してきたことで、虚構が現実のように現実が虚構のように現れる世界を見つめようとする41篇の詩を収録。 ※ハルシネーション(hallucination) ・幻覚、幻影。 ・AI(人工知能)が誤った情報を生成する現象のこと。 【作品紹介】 みちゆき ほんとうに暗いときにしか 光らない雪が 道行きを仄青く照らしている 光るのはうつくしいからではない 踏み越えられなかった弱さやずるさ すべての塵が ほかの光を さめざめと照り返すから 敷き詰められた雪のうえに 固く目を閉じ汚れた昨日が 道標のように発光している 著者 草間小鳥子 発行 七月堂 ブックデザイン 川島康太郎+川島雄太郎 発行日 2024年10月25日 四六判 168ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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サイ【新本】
¥1,870
本多明第2詩集 自らの生きる世界と詩人との対話の記憶 【作品紹介】 馬 いま むこうのほうで光ったでしょ あれは馬のひかりだよ ほら ごらんよ 大きな生きもののこころが 目に力をためているよ こんな夜ふけに ふと遠くを見ていると たまに見えることがあるんだよ ことばを知らない 大きな生きものから あんなふうに あふれてくることがあるんだよ 著者 本多明 発行所 七月堂 発行日 2024年10月19日 A5判 136ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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透明ディライト【新本】
¥1,870
前作『青色とホープ』より5年ぶりとなる新詩集。 窓越しにゆらめく景色に浮かんでみえる人や物の影。 そこにいるのはもう一人の自分なのかもしれない。 もう会えない人のことをゆっくりと思い出すひと時。 ふと立ち止まってみる。 【帯文より】 たったひとつの断片が強烈な印象をもたらす時、それは記憶ではなく、たったいま夢から覚めたような、世界の裂け目が現れる。 著者 一方井亜稀 発行 七月堂 発行日 2024年10月4日 四六判 110ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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旅の心を取り戻す【新本】
¥2,090
柊有花 詩画集 このたび柊有花さんによる、「絵」と「言葉」の本を刊行いたします 明け渡してしまった 自分の心を取り戻すには 目的のない旅が必要だ 【作品紹介】 「呼吸」 人が去ったあとの海は 清らかに 打ち上げられた星は 浜一面にまたたく しなやかに編まれた 太陽の光は 海の底を明るく 照らしている 水面はやわらかに逆立ち 一枚の葉を 浜へ運んでゆく 一艘の白い舟が 岸を目指し進み かもめは追いかけ飛んでゆく 白い半月のかなた 昼の まぼろしのように浮かび ひとり 夜を待っているのか 濃い青と ブルーグリーンのあいだ 海は 海はたえまなく 呼吸している 【著者からのメッセージ】 絵と言葉の本を作りたいとずっと思っていました。わたしにとって絵は仕事でもあり、ライフワークでもあります。けれど言葉もまた欠かすことのできない大切なものです。絵と言葉は分かちがたくつねに影響しあっていて、それを自分らしい形で統合していきたいといつも考えてきました。けれど絵本や詩集など、自分の思うものを収めるにはすこし形が違うように思えて、自分が作りたいものはなんなのかさえわかりませんでした。作りたいと思うものを形にできないことは、わたしにとってとてもつらいことです。そのことが恥ずかしく、自分に対して怒りと悲しみを感じていました。 コロナ禍の内省の時間を経て、わたしがものを作ることへの意識はずいぶん変わったように思います。そのなかで2020年に作った画文集『花と言葉』に背中を押され、もっと遠くへ旅に出たいと思うようになっています。けれど同時に不安があります。家にいることに慣れてしまった自分はそんな旅へ出られるのかしら、と思うのです。 今回刊行する本が、そんな自分のなかの葛藤を打破するようなものになっているかはわかりません。けれど、自分の現在地をあらわしたものであることはまちがいないと確信しています。旅の途上の、悩み、怒り、悲しみ、進みたいと願う、未完成で等身大の自分です。 旅は楽しく面倒なもの。わたしたちにはかけがえのない日常があり、コントロールできない環境があり、いつでも旅に出られるわけではありません。けれど旅と日常のあわいに立って自分の心を眺める時間、それもまたひとつの旅なのだと思います。わたしが誰かの本を通じて自分の心をたしかめているように、この本も誰かにとってのちいさな旅への扉となることがあったら。そんな願いをこめながら、力を貸してくださるみなさまとこの本を届けられたらと思っています。 著者・装画・挿絵 柊有花 発行所 七月堂 発行日 2024年10月5日 138×148mm 88ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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榎本櫻湖 遺稿詩集『Hanakoganei Counterpoint』【新本】
¥3,520
【内容紹介】 2014年~20年前後の間に書かれ、生前に構想された未刊のテクスト群。永遠に読み終わらない書物の夢。 【目次】 道へ/沸騰した水がお湯と呼ばれるまでにかかった時間/冬の旅/群島S./環礁、あるいは《星月夜》/Poème Symphonique for 100 fragments Un texte en hommage à LIGETI GYÖRGY/metamusik/( Tehi)llim/Chaconne pour violoncelle seul/Credo in US、または〈道化師の勝利〉/ビニール傘と地下鉄のいない手紙/(郵便的)、それ以外の犬たち/Sept Papillons/Hanakoganei Counterpoint、もしくは〈群(ancien-ambiant)島〉成仏 remix A version/豚小屋はブリザードに見舞われて ―〈群(ancien-ambiant)島〉成仏 remix B version ―/Bagatelles/Le Tombeau de Tombaugh - Autogynephilia Edit/十字架の蔭から鹿を覗いている男/絹と石、その他の単調な材質のもののための(ton)kraftwerk/コンセルヴァトワールの叔父/Helvetica Activity、(浜辺で、あの頃のわたしたちはいつも溺れていた)/Botanical Music Lesson/睡蓮の覚醒、または〈الكتاب〉へのつめたい憧れとméditation 著者 榎本櫻湖 発行所 七月堂 発行日 2024年9月16日 A5判 240ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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言祝ぐ【新本】
¥1,760
中村梨々詩集 イノチへの賛歌 機知に富む短詩の名手である。冒頭の詩「雨上がり」からして、なんだか可笑しい。「玄関あいとる」と奥にいる家人に声をかけたところ、「血管浮いとる」と聞こえたなんて。そして、それを詩のモチーフにしてしまうなんて。(井坂洋子栞より) 【作品紹介】 冠水 穏やかな晴れの日、ビデオでバイクが走るのを見ている 『木陰に光るとかげの口元は迷わない』 それが合図 黒い影がわさわさと遡上 子どもたちはジェラートになって いつの時も空から降りてくる 雨は友達だね 穀物の声が歌う 風鈴を持って、誰か来たのと母が出てくる 時間をかけて見つめ合ったような埃が鏡台に積もり 格子柄のカーテンが揺れている 窓枠の隅にとかげの足が細く七色になびいた どこへ行くの 百日紅 むきだしの幹に 昼の月が掛かる 見てるだけじゃぁ いつの間にか届かなくなってしまう 口に含んだままの意味 記憶の木陰で涼やかな通り道になる きしむ樹皮 ないものがくるぶしにあたってよろける 出したほうは逃げる 後ろは遠い山々に囲まれ青く澄んで こんこんと水がおぼれてゆく 来ないから行ってみる 背中から清流をひたひた流しながら出ていく こぶた記 それは最初耳に聞こえず カーテンがかすれて吠えた 黒くてぶ厚い布の裏側は 大量の深紅に大人が埋まっていた 小声を飛ばそうとして高く投げると 布がべろになってくり返し迫ってきた それどころじゃない 目と目がちょっとちくちくする ちいさなこぶたはそのたびに身をかわした 一番上の兄さんのわらでできた家 二番目の兄さんの木の家も おおかみに吹き 飛ばされてしまった ふたりはぼくの家に来て 木杓子でおっきな鍋を混ぜてい る 畑でできたじゃがいもと人参と葉っぱのスープ 湯気のなかで怖さはふやけ るどころか どんどん煮詰まってくる感じ おおかみのひと吹きにいつこのレン ガの家も吹き飛んでしまうかと心配して さっきから何もしゃべらないことに なっている 大丈夫だよ この家は時間をかけて積んだレンガだからね おおか みの息なんかにびくともしない 練習一回目で壊れた段ボールの煙突は張り直さ れていた それにしても おおかみのふぅふぅが止まらない 二回くらいでびくともしない とあきらめて、煙突へと向かうはずなのに 窓からのぞくとおおかみは 見られていると気づきもしないで 腰を手に 上半 身を上向けにしたあと 一気に前に倒れ込んだ 何度も何度も何度も、だ ぼくが思っていたより必死に おおかみは息を吹き出していた 弓のようにからだを反らすとしっぽが風になってなびいた そのきれいなしっぽを見ているうちに、だんだん腹が立ってきた 扉をあけ 肩で息をしているおおかみへと前進 じぶんの丸い肩をできるだけ広げて立ちはだかった おおかみは一瞬きょとんとしたが、気を取り直して息を吸う まだやる気だ ぼくはおおかみに飛び掛かった 兄さんたちが驚きと恐怖であえぐ 母さんの「やめんちゃい」が紅のべろを動かす 著者 中村梨々 発行所 七月堂 発行日 2024年7月24日 四六判 104ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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乳既 / インカレポエトリ叢書28【新本】
¥990
寺道亮信詩集 ペニスタワーにひとひらのかげ 間伐 ※かつて森にて メトロノーム、ひとさじ 言葉は現実を変革するためのもので しかない、という臆見、がのさばる 現実 を確変するためのものでしかないっ たらない言葉が、 昼と夜を空費させる 開かれを秘匿させる 孤独、にして ことごとく 祖国、にして そっこくに 散歩と呼ぶには生温い 当社比の森林浴で川のセレナーデを 無視しよう 自由意志死すとも尿意は 死せず しがない、という臆見、がのさばる 歯間ブラシを いとも丁寧に磨く これからの これまでの 街の突撃 星のくすめき 犬の断食……。 擲ってもしゃぶりつけない骨々があるだけであろうと なかろうと 孤独、にして ことごとく 露骨、にして おそまつに 幼時、ほくろをけんめいに剝がそうとした 偶然性は必然性を 必然性は 剥がそうとした 人口のまばらな集落で 私はひとり、三千人になる カーキ色の教科書は口唇時代から始まったきり 冀う 孤独、にして ことごとく 旦那、にして たんねんに メトロノーム、ひとさじ 矯正施設でつくられた いろとりどりのクッキー缶 木々はさっぱり間伐された ひとり でに なかったことは なかったことにさえならない 渡る世間は鬼ですか らに 孤独、にして ことごとく いい加減、にして 「砲弾!」「」「砲弾!」 メトロノーム、ひとさじ 木々はさっぱり間伐された ひとりで に なかった こと は な かっ たこと に (冴え) ならない メトロノーム、ひとさじ 孤独、にして ことごとく いい湯加減、にして 「あほんだら!」 「」「あほんだら!」 著者 寺道亮信 発行所 七月堂 発行日 2024年8月31日 四六判 96ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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七月堂の詩集アンソロジーZINE【新本】
¥880
【七月堂詩集アンソロジーvol.1 『やさしくてらす』】 このたび七月堂刊行書籍より、西尾勝彦、海老名絢、佐々木蒼馬、佐野豊、古溝真一郎5人の詩を一篇ずつ、『やさしくてらす』のテーマに収録した七月堂初めてのスペシャルオムニバスZINEを刊行いたします! 七月堂スタッフ手作業、印刷と糸綴じ製本で限定部数を発行。 今後もテーマを変えて発行してまいりますので楽しみにお待ちください。 発行日 2024年8月23日 ―――――――――――――――――――――――――――― 【七月堂詩集アンソロジーvol.2 『音』】 “七月堂の詩集” アンソロジー第二弾のテーマは「音」。ふだん耳でしか聞くことのできない『音』をポケットサイズの詩集のかたちにしてお届けいたします。著者は、髙塚謙太郎、萩野なつみ、尾形亀之助、うるし山千尋、小島日和、黒田夜雨。 発行日 2024年10月5日 印刷・製本・発行 七月堂 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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浅き眠りは地上に満ちて【新本】
¥2,200
吉川彩子詩集 世界に満ちるすべての音も光も/ 被子植物のようにしずかに実るのだろう 夜の縁をなぞって吹き抜けるやわらかな風に似て 繊細で静かな詩の言葉が 今ここにいる〈わたし〉の内深く埋もれているいくつもの時間に触れ ひそやかな別れの記憶にみずみずしい痛みの光を瞬かせる その先を ここから生きていけるように 川口晴美 【作品紹介】 朝 いつのまにか三人称で話している ここにはわたしとあなたしかいないのに 伏線を回収するたびに 言葉が行き違いつづけて まるで失望の落雷 別れは惜しまない 欺瞞として過去は眠っていて 確かに受け取りましたと すんなり送ってくれない 青みどり色のオーラみたいなこだまは橋の下をくぐって 凍りついた空気の中を響きながら どこか知らない土地へ しじまの中へと帰っていく ゆっくりと前を見る かんたんな結論より前を見るほうが難しい 悲しみにみせかけた暗がりに 強く風が吹く 満ちる前に欠けて ひとすじの光が飛ぶ あなたの背中が燃えている 抱いた背中がしっとりとあまりの重さにたじろぐ ほんとうに好きだったのはこの人だった もうだれもいない朝 ゴミを出しにいく つっかけたサンダルがパタパタと鳴って 空には名残りの月 世界に満ちるすべての音も光も 被子植物のようにしずかに実るのだろう 帰り道 いつも帰り道だった 測れない天気予報と空の距離 投函した欠席連絡ハガキも 図書館に返却した芥川賞の単行本も 改札でかざした残高不足のICカードも キャリーオーバーにつられて買ったロト6も 暗号のようにうつくしい カフェの不在のテーブルに飲み残しの紅茶 だれかと別れて振り返らない いつも帰り道だった 風邪でも花粉でもなく涙が出る 自転車はすぐにキックボードに追い越された まだ恋は改行していない 雪がちらつき始める 浅く眠る街並みはどこまでも点描画みたいだ 前髪を直そうと バッグから鏡を取り出し映ったもの 角度が変わればそこは崖 そこはぬかるみ 降りつもるような 夜の合図は 大気をしずかな眠りにつかせ だれかの傷や痛みを消そうとする わたしはまだあなたと出会っていない いつも帰り道だった 自販機からジュースを取り出して 放電してしまった空のゆくえ 粉々になった飛行機雲が舗道に落ちている 月は太陽とみせかけて翻弄する コンタクトレンズがずれて沁みた いつも帰り道だった ほこりをかぶったスノードームの中にだけ この冬らしい雪を降らせて 今夜は眠ろう 著者 吉川彩子 発行所 七月堂 発行日 2024年8月20日 A5判 96ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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月の領域【新本】
¥2,200
くりはらすなを詩集 外を覗くと/青白い地球が/すっと魂のように消えていった ほどいた後のやさしさの贈り物 【作品紹介】 鏡 ときには なぞときのような 〈黄金虫〉や 〈メルツェルの将棋差し〉 夢の中で君はよく笑っていたけれど ポーの使う ひとつひとつの算術の中には きっと空と空の間にあるという 鏡のようなものがあって (木原孝一が言っていた) (池田克己だったかな) それは死を前に引き返した者にしか見えないもので たぶん もうじき 私の前にもあらわれる 似たような風景 それはどこかで見た風景だ 浄瑠璃かしら ある時突然女の 亭主が現われ 女の顔を張り倒す 見ていた私はついその仲 間に入りたくなり 男の腕を後ろから押さえてしまう もち ろん男の力など どうすることもできないが たしかにそれ は 保育園の中庭でのことで私も女もこの先どうしたらいい のかわからない この時子供たちは一列に並んでこっちを見 ていたのだろうか 女はただ殴られるままになり ほおって おいてくれと言う もちろん女と他の男の関係を亭主が知っ たためだったがあとのことは覚えていない 似たようなことはたしか子供の時分にもあったはずだ 母が 妹を連れて逃げて行こうとしている 父は怒鳴りながら二人 の乗った車を抑えている それはやはりどこか芝居じみて その日 食事を済ませていたのかよく覚えていない 私は翌 日の学校の時間割をランドセルに詰め直す 母と一緒に行か なかった私に父はいつもより優しかったような気がした 著者 くりはらすなを 発行所 七月堂 発行日 2024年8月20日 A5判 84ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ふっとこわばる / インカレポエトリ叢書27【新本】
¥990
神田智衣詩集 抜いてしまった祖母と抜けなかった祖母におびえながら 【作品紹介】 二階 赤い服を着ている人がいる 赤い服の裾を引きずって歩いていく後を私はついていく 階段をのぼった先には待合所があってむこうに飛行機が見える 私はその人のとなりに並ぶ その人が見ている方をみようとして寒さと強風の話をする それにはす向かいの人が答える 待合所ではありとあらゆる二足歩行の人と数多くのそうではない人が 奥へ奥へとにじりよる 入口近くに立つ人は血管が浮き出して肌が薄緑に染まっている 戸の開いた籠を持っている人は 飛んでいった鳥が帰ってくるのを待っている 空のベビーカーにもたれている人がいるのは 中の子どもがとっくに出ていったからだ 私は隣に立つ人に向かってひっきりなしに話し続ける 私の言葉と声を美しいとほめるのは いつもはす向かいに立つ人たちで あの人たちは私に感心があるわけではなくて 私が聞き返したいことは一つもない (請求書が踏みつけられている) 赤い服を着た人は少しも動かずに立っている いつになっても私には目の色がわからない きっとレンズでおおわれているからなのに 覗いても覗いてもわからないのは まつ毛のせい、で まぶたのせい、だ すべて引き抜いてしまいたいと私が言うのも聞かずに その人はずっと遠くを見ている 私がその人の服をはぎ取っても 首に手をかけてそのまま引き上げても こめかみを強く突いてさえも その人がこちらを見ることはない 待合室の中で次々やって来る人たちが 待っているのは遅延か欠航の知らせで 私達は少しずつ縮んで待合室は近いうちに底が抜ける それまで私は下を向いて その人の赤い服が擦り切れていくのを見ている 著者 神田智衣 発行所 七月堂 発行日 2024年8月20日 四六判 94ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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白くぬれた庭に充てる手紙(サイン本あり)【新本】
¥2,200
望月遊馬詩集 第62回藤村記念歴程賞受賞作 あすの火は わたしたちのなかにある ……………… 光を孕んだ水が流れて島を象るように、言葉はほどかれ何度でも編み直され、こんなにも柔らかく強く透きとおる詩になった。実在の場所の伝承、そこにあったかもしれない情景とリアルな今に息づく思い。外と内。豊かにくつがえされて季節はめぐり、届けられる声を掬う私たちのてのひらに生命が燃えあがる。――川口晴美 ……………… 【作品紹介】 かすかなひと 春から夏のゆるやかな野と こぼれかけの庭 わたしのブラウスにも白い舟が漂着して 白い舟は 壊れかけのまま なかから こびとの船員が這いだしてきては 遠い国の合言葉を となえた わたしという舟を すこしだけ 前進させて こびとは 果ててしまったか もうそこには影すらない こびとたちの溢れる港には 新鮮な魚やていねいな職人が息づいていて わたしが美し い鉱石の指輪を買うことは まるでこびとたちへの問いかけのようで 死ぬことも生き ることも 永い時間のなかでは ゆっくりと木べらを持つこびとたちに かき混ぜられ ていくような気がした 爛熟する正午 わたしはスウプを口にし こびとにもそれを飲 むように強要した 壊れかけの庭には 薔薇の迷路がつづいている ここに来る者も 出ていく者もいない この完璧な企図のなかで わたしは洗い終えた皿を 湿った布巾 でぬぐった こびとたちは それぞれの仕事に戻った あるものは漁師として 朝の冷 たい町を巨大な魚をひきずって歩いた あるものは医師として 少女のきずぐちを縫い 少女に花のような接吻した また、あるものは会計士として ある未亡人の相続にまつ わる 不吉な地図を燃やした すべてのものが 水音のようにひらいていたのだ その 清潔な音 純粋な音――。わたしが守りたかったのは そんな音の絵だ 白い舟は 湾を周回し わたしは口をおさえて 港をあとにした どんなに苦しくても 消えいりたいと思ったとしても ことばを棄てることはなかった そんなあなたに わたしは わたしのことばを相続します 【著者プロフィール】 望月遊馬(もちづき・ゆま) 2006年、第44回現代詩手帖賞受賞 第一詩集『海の大公園』(2006、poenique)で、第12回中原中也賞候補 第二詩集『焼け跡』(2012、思潮社)で、第18回中原中也賞候補、第4回鮎川信夫賞候補。 『水辺に透きとおっていく』(2015、思潮社)で、第26回歴程新鋭賞受賞、第21回中原中也賞候補 『もうあの森へはいかない』(2019、思潮社)で、第70回H氏賞候補 『燃える庭、こわばる川』(2022、思潮社)で、第73回H氏賞候補 著者 望月遊馬 発行所 七月堂 装丁・組版 川島雄太郎 発行日 2024年7月31日 A5判変形 132ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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公園のまんなかにはおおきな木があって【新本】
¥2,200
たかすかまさゆき第1詩集 届かないものを あなたと分かち合いたい …………………… たかすかさんの詩とともに散歩をし、佇み、微かな風を肌で待ってみる。 それは果てしなく孤独で、自由で、色気のある時間だ。 ――三宅唱(映画監督) …………………… 【作品紹介】 途上 坂の途上の地面は断層が剥き出しになっていて 茶色と灰色の入り混じった土が不安定に固められた足場を伝いながら 白いヘルメットを被り、紺色の作業着を着たひとがひとり降りてきて 奥の空間へと消えていく 奥では鉄骨と青いシートに覆われた穴だらけの家が 完成を待っているのか 解体を待っているのか 浅く削られた地面に鎮座していて その横で風に揺れ斜めに伸びる一本の木の緑が 家の中を行き来する作業着たちの影を曖昧に拡散している オーストラリアっていま何時だっけ? 風にのって不意に届くカタカナの地名が 坂に乗って不安定に傾くからだの姿勢をかたかたとなぞり 謎かけをたのしむように笑い声が遅れてやってくる ひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃ、と 穴から風が漏れるような破裂音が辺りに響き それにあわせるようにシャッター音が三度、 坂の上から鋭くたてつづけに鳴る 撃たれたように振り仰げば 空を覆う黒と灰の雲が うすくれないに染まりはじめた眼下のまち並みと 層を成しながらゆっくり下降する 加工され固定された時間をカメラにおさめたそのひとは 鳥の囀るオーケストラを背後にしながら この世の反対側にいるみたいな深く沈む眼 中央区立浜町公園 橋の向こうのまちのことはよく知らなかった。とぐろを巻く首都高が空を覆い、その真下の空き地で父親がちいさな子ども二人と遊んでいた。さらに進んで、大きな通りで右に曲がった。真っ直ぐ行くとまた別の橋があるらしかった。橋を渡ったらまた橋って、なんかどこにも行けんみたいやん? きっとあなたならそう言った。橋の手前で左に折れて、公園に寄った。公園では着物を模したお揃いの服を着た子ども四人がかくれんぼをしていた。隠れる場所はあまりなさそうだった。大人たちは水辺のベンチで談笑していた。その水辺に野生のネズミが一匹どこかから現れて、とてもおいしそうに水を飲んだ。公園内の照明はどれも濃い橙色だった。陽はまだ沈みきっていなかったけれど、もう空には陽が生み出す橙色は残っていなくって、陽が水平線に消え去る瞬間の淡い黄色だけが西の空にうっすら膜となって残っているだけだった。だから公園を満たす橙色は全部人工的なもので、人工的な橙色を透かして見る人間たちは、どれも古い映像のなかのひとたちみたいで、なんだか過去のようだった。もちろんそこにあなたはいなくて、わたしはひどく安心し、安心したことにひどく胸を痛めた。それから公園脇の階段から川沿いの遊歩道へ降りた。橙色は届かなくなり、陽はすっかり沈み、一段一段降りるごとに辺りは暗くなっていった。川は巨大で、真っ黒い水はひどく波打ち、歩道まで溢れてきそうだった。怖かった。そう思っていたら呑み込まれた。 それは言い訳でしかないんやん? きっとあなたならそう言った。良いわけがない。良いわけがない。意味なくくりかえすわたしはまだ川沿いの遊歩道を歩いていた。わたしのからだを運ぶのはわたしの足だった。しらじらとした蛍光灯の明かりにまみれたわたしの足の足裏が、地面に着地するまでの時間とその隔たりを正確に測る必要があると思った。目の前には色とりどりのネオンにライトアップされた大きな橋があり、川面にネオンがモザイク状に映って揺れていた。川を遡る一艘の船が橋の下を垂直に通過し、船が通った跡で切断されたネオンが揺れていた。石を投げればネオン色の煙が上がるだろう。煙の中からあなたが現れるだろう。けれども石はなかった。いつまでもアスファルトの平らな道だった。橋の上から車のヘッドライトが鋭くこちらを射す。隠れる場所はなかった。 著者 たかすかまさゆき 発行所 七月堂 発行日 2024年8月3日 A5判変形 124ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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緋のうつわ【新本】
¥2,200
【出版社内容紹介】 篠崎フクシによる第三詩集 ……………… かわたれに まねかれる緋よ あなたは ひと世をいれる うつわとなる …………………… 泣くための作法を 教わらなかったので 泪のかわりに詩をふらせたのは 昔日のゆりかごでした 「朴のみち」より 【著者プロフィール】 篠崎フクシ 第一詩集『ビューグルがなる』(2021年)〈第36回福田正夫賞、第72回H氏賞候補、第32回日本詩人クラブ新人賞候補〉 第二詩集『二月のトレランス』(2022年) 著者 篠崎フクシ 発行所 七月堂 装丁・組版 川島雄太郎 発行日 2024年7月20日 四六判 138ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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蝶番(サイン本あり)【新本】
¥1,650
梁川梨里詩集 「わたしは、いない」と書くとき、書く「わたし」がいる。 矛盾を誘い出すことばは論理を超えて肉体に近づく。 ――詩人・谷内修三 わたしを喪失する。その傷跡から新たにわたしが芽吹く。 あらゆる境界に分け入り、あなたと混ざり合う。 永遠にも似た記憶の営み。 その息遣いに眩暈がした。 ――詩人・文月悠光 【作品紹介】 遠雷 たいないを越えた水が たいらな裏側では雨になる 夕立に駆けだしたまま 帰る家の灯りが みつからない 落とした百円玉の匂いがする 空が待つことを止めた もう、わたしも諦められてしまったのだろう 誰も迎えの来ない夜に 用意された片方の足だけが ぶら下がっている この胸の波の果て 貝殻を捨てた場所 ここにいることを忘れてしまったら 誰からもみつからない 名付けられたものは いつか消える 手放しで 音のない口笛を吹く 著者 梁川梨里 装幀・組版 亜久津 歩 発行所 七月堂 発行日 2024年7月7日 A5版 126ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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場末にて【新本】
¥1,540
すべてのアウトサイダーへ贈る 七月堂創立50周年記念企画第二弾! このたび、西尾勝彦新詩集『場末にて』を発行いたします。 詩集単体としての発行は、『ふたりはひとり』より二年ぶりのこととなりました。 【著者コメント】 作品「場末にて」を書いたのは2019年のことです。大阪のとある小さな書店で開催された朗読会のために書き下ろしました。記念にするつもりでその店主を描きはじめましたが、次第に自分のこととなり、未来のこととなり、すべてのアウトサイダー、場末を支えるひとたちのための言葉になっていきました。朗読会当日、しずかに読み切ったときの気持ちはまだ覚えています。あの日から、4年。ようやく、詩集『場末にて』を完成させることができました。多くの人々の手に届くことを願っています。 【版元コメント】 この詩集はきっと、誰かにとって、ひと休みさせてくれるような、木洩れ日がきらめく木陰のような、そんな一冊になるのではないかと思いながら制作を進めてまいりました。 こうして形にすることができ、嬉しい気持ちでいっぱいです。 装画は前回の詩集『ふたりはひとり』につづき小川万莉子さんの描き下ろし作品です。場末にてひかる小さな明るみを表現してくださいました。 この詩集には、「場末」に生きる人たちやそんな人たちがつくる場所がたくさん登場いたします。 ほの暗いなかでしか見えないくらい、けれど確かに存在する、ちいさなやすらぎの灯のような一冊です。 ぜひお手にとってご覧ください。 【作品紹介】 駅 彼は うすい背中のひとなので 職場から 誰よりもはやく 家に帰るみたいだ いつも歩きなので 駅に着くころには 埃っぽい風のなかである ちょっとうつむきかげんの ふうわりとした顔つきで 行きと帰りでは 気持ちに ほとんど変化がないみたいだ 夕暮れの あわい光のなかを 彼は歩いている うすい背中のひとは 駅近くの和菓子屋に 立ちよっている 病弱の妻に 若鮎を買って帰るらしい がま口を開けて 一枚いちまい 小銭をかぞえている 著者 西尾勝彦 装画 小川万莉子 装幀・組版 川島雄太郎 発行所 七月堂 発行日 2023年10月10日 175mm×110mm 132ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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死者と月【新本】
¥1,980
【内容紹介】 詩とは、あなたを探す灯 死は生あるものに必ず訪れる。 遺されたものはこの世界を生きてゆく。 「その世界は、陰影の世界である。実在が影となる世界である」(「補遺」より) わたしを探して 冬の木立を歩いている 木立の中を歩いていると 光に音が吸い込まれ 人影が二つ 木陰に浮かぶ 彼らは優雅に球で戯れ 私は 冷気で白む息に 影でもないわたしを感じ なおひとり 歩いてゆく 歩いていると先が開け 外から音が 漏れてくる 何処へ など知る筈もなく ただ 躰の重みを僅かに感じ 誰でもないわたしは 私を引きずり 歩いてゆく 手紙 姿を消した彼女から 届いた手紙がある 言葉も写真も色褪せていた けれどもそれは 今にも滲み出ているものだった 今に滲み出ている 闇や影が きらきらと輝くように 揺れていた なぜだか僕は どうしようもなく懐かしいと思った 自分のものでもないのに 自分は知らないのに そこに綴られている言葉には 重みと救いがあった 言葉にならない感情の淀みと 切実さもあった そして思った 誰かと 世界と 繋がろうと していたのではない そうではなく 必死に 自分と繋がろうと していたのだと そうやって 結果的に 不器用なりに 今に向かって 前に進んで 躓いていた それを届けようと思った彼女の意志を 僕は 美しいと思った 誰かの意志を 美しいと思う そのために人は生きているのだろうか 夜を乗り越えて カラスが屋根の上をコツコツと歩く音で 僕は目を覚ました 朝はまだ早い 外が少し白みはじめた 誰もいないリビングの大きな窓 カゴにあるグレープフルーツ 秒針のない時計 昨夜食べた味のないチキン ナイフとフォーク 沈黙 月はまだ出ているだろうか コーヒーを手に 僕はぼんやりと考える これまでの人生に どれほどの間違いが あっただろうか もちろん 後悔することはあった けれども もし もう一度この人生を やり直すことができるとしたら 僕は 同じ場所にいるのだろうか 多分 確率は五分五分だ でもまあいいさ どこにいたって こうして夜を乗り越えていくだけだ 冷蔵庫が低く唸り 氷が落ちる 鼻から息を吸い ゆっくり吐きだす 新聞配達のバイクが 十字路で いつも通り 朝七時のクラクションを一度だけ鳴らす 僕は知っている それが一日のはじまりを告げる 一人分の孤独の合図だということを 著者 関根全宏 発行所 七月堂 発行日 2023年11月5日 四六判 117ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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フレア【新本】
¥1,870
長尾早苗詩集 太陽になるんだ 心のなかのたったひとりの部屋からうまれる 生きる意志は 言葉を動かす あなたやわたしのゆらぎをみつめ 刻んで今日を行くために ──北爪満喜 【作品紹介】 「告白」 雲がうねっている こういう時に体がおかしくなると わかっていたはずなのに 置き去りの身体を取りに行く 傘をさして 天気予報がわからなかった 小さな神さまはつぶやかない みぞれ交じりの雨に つらくなって ささやかな場所だけで 安らげると思った 同じロゴ 同じパーカー 同じランニングシューズの少女たちが パン屋へ向かっている、平日 今日の彼女たちのランチはコロッケバーガーだろうか 置き去りの身体は どこかひしゃげていて 水分を与えなければいけなかった 雲がうねっているから 犬の一族は今日も朝に会合を開き 不穏な目の青年はベンチで何も見ていない目をこちらに向け そういうものが ここを 今日一日を不穏にしてしまう 勝手にしてください いつもの日常をおくることができるように 今日も歩き そういったものと出会い そして 黙ってお互いの勉強や生活をしているわたしとあなた お互い少し離れた場所で お互いに 今日のスイーツタイムにどのコーヒー豆を挽こうか考えている あなたがいるここが 好きです 大好きです どうでしょうか 今日は 新鮮な豆を挽いたコーヒーでも 「ガーベラ」 歳を取っても本を書きたいと 目の前のピンクのガーベラを見ながら 思う ガーベラは贈り物 こんなふうに真っ直ぐに わたしの仕事部屋で するすると光へ 伸びていくガーベラ わたしだって 光の方へ伸びていく AirPodsから美しいギターの旋律 その前の 余韻 夜が明ける前の 植物たちが 起きてこない時間に わたしと ガーベラは友達である 今日からまた 新しく本を作ろうと思う ロルバーンを使い潰すように このツバメノートも使い潰す 何冊も 本を書く生活が またこれからも はじまっていく 愛する書店に花束を 見えない読者に花束を そんな思いで わたしのことばは 輝きを秘めている 著者 長尾早苗 発行所 七月堂 発行日 2022年8月1日 四六判 114ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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聖者の行進 / インカレポエトリ叢書8【新本】
¥990
長尾早苗詩集 「わたしもかつてはくらげだった」 【作品紹介】 プレゼント 遺言状って究極の自己満足だよね と友人が言っていた その場で何も言えなかったわたしは 夢で 三十年後のわたしに聞いてみた ねえ 伝えられないもがきを伝えるって自己満足なの 三十年後のわたしは そうねえ、わたし本当に死んでないから分からないわ と柔らかく微笑んで たぶん彼女は と続ける 一度死んでないわね 朝目覚めて 庭の花に水をやる 疲れはてたわたしはよく ああ花になりたい などと甘えたことを思ってしまう 水と太陽と二酸化炭素だけで生きられるなんて! 嘘をつかないで枯れてゆくなんて! 生きるって、パワーだ ものすごく しんどくなるときもある お腹が空くと無性に悲しくなるし 放っておいて! と かまって! の気持ちがごちゃごちゃして かさばる 感情なんて難しいもの 持って生まれてきたわたしたちってみな苦しい 昔 植物人間の本を読んだことがある かわいそう と思ったり、した はずなのに 疲れはてたら植物になりたいなんて わたしはとても 生きることに甘えている そうねえ、あなたってとても と三十年後のわたしは笑う むやみやたらと地面に繋がっているような気がするわ そうなのかしら そうよ、花って一生そうなのよ かわいそう、つらそう だから、花は美しくなるしかなかったのかもね 花を愛するひとに悪いひとはいない と母が教えてくれたことがある 花に添えられた ありがとう のメッセージカードを盗み読みしてしまうたび 仕事中なのにほろりとしてしまう ひとは つらくてもごはんを食べて 眠って 生きなくちゃいけないから ひとにことばや花を贈る それはとても美しい行為で 花が人生になかったら と考えると ちょっとぞっとする 明日も朝目覚めたら 去年母に贈った花に水をやろう 生きるってそんなに嫌いじゃないと 思えるかもしれない 著者 長尾早苗 発行所 七月堂 発行日 2021年3月30日 四六判 91ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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風とカマキリ【新本】
¥2,200
【内容紹介】 言葉の展覧会へようこそ 著者は詩人藤富保男のもとで長年詩を学んで来た。 描かれる情景は日々のひと時を豊かにしてくれる。 あなたは町の中で山羊に出会うことはありますか? あなたは海の上喫茶店へ出かけたことはありますか? ようこそ『風とカマキリ』へ。 風と共に 彼は歩いていた 氷の上を滑るように 時々 立ち止まり たまに ペタンと座り込み また歩き出す 何人もが同じ方向に進み すれ違う人はいない 空が動く 突然 彼は後ろ向きのまま 風に吸い込まれた まぼろし村 なめらかな木肌の幹が 鄙びた田舎道に並ぶ 枝は四方八方に長く伸び その枝には細く葉が絡む 先端にうす茶がかった桃色の塊 生垣に囲まれた家々 その裏庭にも塊の花が揺れる 近くで見ると 塊はかき氷のようにフワフワ 触れると崩れそう ホロホロと花 満開 夏 もも色に染まる村 節穴 目が覚めると 部屋の中に 光の槍が数本 刺さっていた 小さな手で 掴もうとしたが 掴めない 目が慣れると こまかい塵が 踊っていた 木の雨戸を開ける と 朝が来た 著者 萌沢呂美 発行所 七月堂 発行日 2023年11月20日 A5判変形 77ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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インカレポエトリ10号 貂【新本】※送料をご確認ください
¥1,000
【内容紹介】 様々な大学の学生が参加している学生詩集の第10号です。 【編集】 朝吹亮二 新井高子 伊藤比呂美 大崎清夏 笠井裕之 カニエ・ナハ 川口晴美 北川朱実 小池昌代 瀬尾育生 永方佑樹 中村純 野村喜和夫 蜂飼耳 樋口良澄 四元康祐 発行 インカレポエトリ 印刷 七月堂 発行日 2024年4月30日 A5判 425ページ 【送料ご選択時にご注意ください】 *1冊→「クリックポスト」 *2冊→「レターパックライト」 *3~4冊→「レターパックプラス520」 *5〜8冊→「クロネコヤマト80サイズ」 *9〜10冊→「クロネコヤマト100サイズ」 【関連本】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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二〇の物と五つの場の言葉【新本】
¥2,200
【内容紹介】 ポンジュをのり越えて、この知略は出現した ポンジュの再来、というだけではない。諸篇の発表当初は「運動と時間」という副題がついていた。ベルクソンも物理も来ている。みんな来て、尾内達也という詩人の頭脳になり、眼になり、さらにそこから、あらまほしき事物の変容がまなざされている。そう、眼差しは真名指しでもあるだろう。二十の物と五つの場の〈誕生〉と〈名づけ〉をめぐる、これは静謐な陶酔の物語だ。 野村喜和夫 十二ロールのシングルのトイレットペーパー どこにも存在しない青い花がプリントされた、ビニールのパッケー ジからは微かにその青い花の香りがしている。ドラッグストアーの やや高い棚に積み上げられた十二ロール入りのパッケージはあまり 目立たない。「ふっくらやわらか」がセールス・ポイントのトイレ ットペーパーも、四つずつ三段重ねると意外に重い。一ロールで五 十メートルあると謳っている。五十メートルの空間が十二個凝縮し ているわけである。つまりは六百メートルの空間が、この安っぽい ビニール・パッケージ一つの中にある。次々に縦に伸びるか横に重 なって広がるか、垂直に高い壁と化すか、意外な重さは六百メート ルの空間の重さであった。五十メートルのロールの芯には幻の青い 花の香りが宿り、それが六百メートルの空間を自在に咲き乱れてい る。どこにもない青い花が咲き乱れた夏野をまるめて十二ロール、 手に提げてレジに並ぶ。パッケージの下の方に買い物した印の黄色 いテープを貼ってもらって帰る。幻の花の消費量は激しいのである。 GAZA――今ここに「ある」こと 月は眠らない――GAZAは眠らない(海も陸も敵意に満ちてゐる ――止むことのない瓦礫の崩落―空はひとつの偽りである。 月の光の中で、面のない人形たちが群れてゐる。GAZAに言葉は 届かない――悲鳴はいつも緑の小箱の中に隠されてゐる。 言葉を――透明な膜がかかつた言葉を―ナイフで切り出す、 痛み――血――詩――もはや、それはひとつの翳りである。 ――今ここに「ある」こと、 今ここに「ある」ことでGAZAとつながる――、 まだ、雪は降らない、まだ、月は上がらない。 私があることで「死」とつながり、 私であることで「生」とつながる。 hic et nunc hic et nunc 光であれ――雪の、月の、 著者 尾内達也 発行所 七月堂 発行日 2024年5月25日 四六判 92ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ヒトノマ / インカレポエトリ叢書26【新本】
¥990
田村奏天詩集 それでも、さわやかでありたいと思って 薄雪色の指 【作品紹介】 「街と暮れ方」 帰り際の夕立が街を知り尽くしている クリーニング屋の文字がさびれて いくつかの空白を埋めて読む 線路沿いは雑草が茂り 今にでも人類史がまっさらになるような予感 黒ずんだビルに書かれた 「ヘルス」はそれほど健康的でなく おぞましい桃色の看板をしているが 一方で自分が口に運ぼうとしている チューインガムも同じ色だった (それは平穏を保つための 音から意識を背けるための 端的な逃避行) 考えれば胎内ははっきりとした 鮮烈な肉の色をしていたはずで 閉ざされた暗がりに見ていた 熱のための色 人体から発生した我々は その色に寄せられた蛾にならざるを得まい 車窓に流れていく雨後の街を見ながら 強い空腹感を覚えて さらにはこの街がいつからか 鉄の匂いにさらされていることを知っている わたしは誰の信奉者にもならないので 冷静に脳が暮れていく街を解釈する 薄紫を羽織って沈みゆく太陽は 明日の雷を知らない 著者 田村奏天 発行所 七月堂 発行日 2024年4月15日 四六判 96ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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花下一睡【新本】
¥2,750
秋山基夫詩集 〈 詩 〉の始原へ 終わらない夢幻劇 【作品紹介】 はぎ 先ごろ思いもかけぬ幸いにて宮城野に参りました あわわあわわと萩を分け露に濡れつつ歩みました 歩めども歩めども萩の花萩の露萩の花萩の露です 薄闇にしゃがむと西行法師の歌が聞こえてきます あはれ いかに 草葉の露のこぼるらむ 秋風立ちぬ宮城野の原 するとほんとうに風が吹いてきましたいちめんに むすうの露がむすうの萩の花からこぼれています あわわあわわと花を分け露に濡れつつ歩みました 月が昇りました銀の世界で馬鹿になってしまった 美しいお方のしゃれこうべがいまも転がっていて 萩の露を舌のない口をあけてのんでいるでしょう むかし郊外に 住んでいた頃 休日の夕方には 妻とよく散歩に出た 道ばたに萩を見つけ これが萩だと教え 顔を近づけ うす紫の小さな花を 暗くなるまで見ていた 何十年も過ぎてしまった病み衰え何もかも失って 白い壁の部屋で白い天井をただぼんやり見ている 著者 秋山基夫 発行所 七月堂 発行日 2024年4月1日 A5判変形 112ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955