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半濁音に咲く花を / ケイトウ夏子【新本・七月堂書籍】
¥2,090
予約商品
ケイトウ夏子詩集 行きつ戻りつする季節―― 痕跡の記憶に花びらを降らすように 【作品紹介】 揺籃期 踏切を待つ間に夜を洗う風が吹く 通り過ぎる電車に浮かぶ 方々へ別れる予定の人々は 灯台の顔をして揺れている 遮断機があがると道が生まれた 真っ直ぐに進むことをこばむ足は 敷き詰められた小石に触れる それは 未完の寄り道 いつか水底で ねむっていた時間に繋ぐ 渡れる川を横断する 遠景にころがる果実に映された、いくつもの呼びかけ 皮を剥くように 拡がるとばり 手招きする一歩手前で止めて 転写される系譜を追う 見ない人の分まで空をみている 著者 ケイトウ夏子 発行所 七月堂 発行日 2025年12月15日 四六判 68ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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幻視録 / 秋元炯【新本・七月堂書籍】
¥2,200
秋元炯第七詩集 ガレキの上を ゆっくりと浮遊していく。 【作品紹介】 キツツキ 死は キツツキの顔をして 男の肩に ちんまりと坐っていた 男はそれでも 背筋をのばし 病室の窓の方に顔を向けつづけていた 男にはもう 話をする気力が 尽きているのかもしれないと思った 昔 世話をしてもらい有難かった さっきも言ったことを 言葉を変えて話しかけた 急に 男の身体がぐらりと揺れた 手で口を抑え 空咳を堪えているような仕草 そのまま 二度 大きく頭をさげた 帰ってくれということのようだ 病室を出ようとして振り返ると キツツキは まだ男の肩の上にいて 灰色の目で 遠くを見つめつづけていた 著者 秋元炯 発行所 七月堂 発行日 2025年11月16日 A5判 134ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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未来形で死んでいた / 栗原ミライ【新本・七月堂書籍】
¥1,870
栗原ミライ第一詩集 たいていのものは 肌を 通り過ぎていた 【作品紹介】 彗星 交差点を抜けるとビルの隙間から 夜が見えた 死にそうな地上を 眠りながら歩いている 彗星 誰も知らなかった 空を切り開き 溺れていく自覚もなく 目的地のあなたを目指す 空気を揺らし すべてを燃やして あなたの背骨を鳴らす 尾がひかって消えた これほど明るいのに わたしはこの星に着地できない 著者 栗原ミライ 発行所 七月堂 発行日 2025年11月30日 四六判 110ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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散文の連なりについて / 髙塚謙太郎【新本・七月堂書籍】
¥2,530
これが小説なのだとしたら、時代への完全なる抵抗だと思う。 ファストな時代のファストな読書への回答として。 人生はカタルシスのための物語ではないことの表明として。 そして、詩的なるものへの復権として。 ――梅﨑実奈 髙塚謙太郎『散文の連なりについて』は詩だ。 散文の連なりではあるものの、詩の水がひとしずく滴り落ち、やがてしとしとと連なっていくように、ここにある言葉ははじまり、つづいていく。 髙塚謙太郎の行分け詩は、語りの構造が裁断され細分化、複数化され緻密に再構成されていく極めて高度な書法に到達したが、ここの歩みは水の滴りのようにしとしとと進みやがて読者を詩の歩み、詩の呼吸そのものに同化させていく。 いつまでも。詩に終わりはない。 ――朝吹亮二 詩とは韻律だ。では散文は? 髙塚謙太郎は、ありふれた物語も愛も信じてはいない。信じるのは、書くという情熱と虚無とともに流れる言葉だけだ。 雨や光や人や文字に初めて触れ、離れて思うようなこまやかさと緩やかさで言葉はたゆたい、流れ、記されたどの瞬間も互いに似ていない個別の愛しさとなり瞬く。やがて日常の方がこの言葉の瞬きを写し、生き直すだろう。 比類ない詩の書き手による、散文という時間との本気の戯れ。その連なりは切ないほどに美しい。 ――峯澤典子 そういえば机上の時計が動かなくなって久しい。電池は、どこかにあったかな。それでも時針や秒針がいつかの時を刻んだ瞬間のままだということに、私は新たに驚いてもよかっただろう。そしてたぶん、そのときの私は時計の前にはいなかった。私だけがその瞬間を生きていないような、逆説的だけれど、そのくらい愛しい時間というものの深さを喩として書いていることが多いように思う。その証拠のように動きやめた時計だとしたら、この部屋はそれだけで完璧ではないか。 (本書より) 著者 髙塚謙太郎 発行所 七月堂 発行日 2025年12月1日 四六判 140ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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花魂〈ソウル〉 / 橋本由紀子【新本・七月堂書籍】
¥2,750
橋本由紀子幻想コラージュ詩集 花は恋する 花は生殖する 永遠を求めて 【作品紹介】 庭の時間 ダリアの匂いは 消えた庭の夏の匂い 囲われた土庭で繰り返し花は咲いた 不思議ないのちのにおいを 新聞紙に包んで 幼稚園にはこんだ 夏風と秋風の日 吸い上げる時間 消化されていく時間 去っていったにおい もう手にいれられない 記憶の中の 若い父と母の庭の時間 誰もいなくなっても ダリアは球根を育てている 新聞紙に包まれた ことのある 生命の匂い 著者 橋本由紀子 発行所 七月堂 発行日 2025年11月10日 135×220mm 150ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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人の森 / 関中子【新本・七月堂書籍】
¥1,980
関中子詩集 席を立つ前に 人は何を大切にしたいだろう 退屈と快楽か 人である優しさか 【作品紹介】 水縁(みずえん) 池に礫を投げ入れる 人は縁をめぐって 礫は沈んで 生まれる波 円を描けばそれぞれに 尽きるまで 水は 遠い旅に出る 視線がたどって重なっても その旅は暑くやわらかに遠い 今度は礫を池で走らせる 希望を置く知恵を 時をすり抜けるだまし絵を 水の縁に水の円 著者 関中子 発行所 七月堂 発行日 2025年10月20日 四六判 78ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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詩なのかもしれない / 大島健夫【新本・七月堂書籍】
¥2,200
大島健夫詩集 小さな声を探す 聴こえない声に耳を澄ます そんなときの自分の声は いつもだんだん大きくなってしまう 【作品紹介】 今日で地球は滅びるけれど 今日で地球は滅びるけれど 明日は久しぶりに外食しようか 今日で地球は滅びるけれど 今年の夏こそ、西表島に行こうよ 今日で地球は滅びるけれど 次の車検のタイミングで、新車を買おうと思うんだけどどうかな? 今日で地球は滅びるけれど お母さんの誕生日プレゼント、何をあげたら喜ぶかな? 今日で地球は滅びるけれど 受験生、がんばれ 今日で地球は滅びるけれど 空手の稽古に行く時間だよ 今日で地球は滅びるけれど ちょっと資源ごみ出してくるね 今日で地球は滅びるけれど 洗濯物たたんでくれてありがとう 今日で地球は滅びるけれど おやすみ、また明日ね 著者 大島健夫 発行所 七月堂 発行日 2025年10月10日 A5判 80ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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唇に磁石 / 渡辺八畳【新本・七月堂書籍】
¥2,200
渡辺八畳詩集 渡辺は「そのものへと、成って」いくことを、 言葉で彫刻するかのように、 独特の大胆さと繊細さで、 彫刻の刀ならぬ筆を鋭く振るっている。 ―― 和合亮一 【作品紹介】 皿が溶ける日 頭上にある点滅灯が さして主張せずに独立を果たすから 今日はその下を無毒の鉛が流れていく 正午前の日差しはいい感じに焼いてきて 一歩 二歩 夜には雨が降ることをまだ知らない 少し前まで全世界は静止していたのに それを全く感じさせない正常な日だ 見ない見なーい 見ない 腹を擦って道を作る 陶器が土に戻らぬまま溶けて 上へ上へと垂れ流れて 絶妙な硬さを視覚から感じさせて 最後のひと液は 量が足りなくてかすれ残った 途端全てが緋色に変わり重力が増す 著者 渡辺八畳 発行所 七月堂 発行日 2025年10月3日 A5判 120ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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七月堂の詩集アンソロジーZINE(vol.1~)【新本】
¥880
【七月堂詩集アンソロジーvol.1 『やさしくてらす』】 このたび七月堂刊行書籍より、西尾勝彦、海老名絢、佐々木蒼馬、佐野豊、古溝真一郎5人の詩を一篇ずつ、『やさしくてらす』のテーマに収録した七月堂初めてのスペシャルオムニバスZINEを刊行いたします! 七月堂スタッフ手作業、印刷と糸綴じ製本で限定部数を発行。 今後もテーマを変えて発行してまいりますので楽しみにお待ちください。 発行日 2024年8月23日 ―――――――――――――――――――――――――――― 【七月堂詩集アンソロジーvol.2 『音』】 “七月堂の詩集” アンソロジー第二弾のテーマは「音」。ふだん耳でしか聞くことのできない『音』をポケットサイズの詩集のかたちにしてお届けいたします。著者は、髙塚謙太郎、萩野なつみ、尾形亀之助、うるし山千尋、小島日和、黒田夜雨。 発行日 2024年10月5日 ________________________________________ 【七月堂詩集アンソロジーvol.3 『暮らし』】 “七月堂の詩集” アンソロジー第三弾のテーマは「暮らし」。さまざまな事が変動する日々のなか、選択し、取捨することもふえてきたように感じます。そんななかでも変わらずにある暮らしの光景。営みのなかで生まれたアンソロジーをぜひご覧くださいませ。 著者は、一方井亜稀、佐々木蒼馬、江戸雪、國松絵梨、川上亜紀。 発行日 2024年11月1日 ________________________________________ 【七月堂詩集アンソロジーvol.4 『花』】 “七月堂の詩集” アンソロジー第四弾のテーマは「花」。 今回は、峯澤典子、菊石明、西尾勝彦、星野灯、暁方ミセイ、梁川梨里 6人の詩を『花』をテーマに収録しました。 珠玉の詩編との新たなる出会いをお楽しみください。 発行日 2025年9月18日 ________________________________________ 【七月堂詩集アンソロジーvol.5 『幽か』】 “七月堂の詩集” アンソロジー第五弾のテーマは「幽か」。 今回は、西尾勝彦、たかすかまさゆき、一方井亜稀、デイヴィッド・イグナトー、高嶋樹壱、小川三郎 6人の詩を『幽か』をテーマに収録しました。 それぞれの詩や詩集との新たなる出会いとなることを願い制作しています。 発行日 2025年10月5日 印刷・製本・発行 七月堂 ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ズボンを穿いて消える / 藤井晴美【七月堂書籍・新本】
¥1,650
藤井晴美詩集 【作品紹介】 案山子の曲率 分析と称して破裂音。 ptkbdg シラミの行列で夜な夜な街はまぶしい。 人はいなかったかもしれないし、ある時いなくなったのかもしれない。殺されたのか、病死なのか。事実性は時間とともにもの凄い破裂音で変身する。それが未来だ。しっかりしろ他者。 虫や鳥が裏返っている。不正でもしているように泳いでいる魚のようだ。 黒体の仏頂面禿げた宇宙の総天然色がべら棒。が並ぶおもちゃ屋の食卓。クラゲの作り笑い。 ぼくは歯も生えて、肉を齧れるようになりました。 著者 藤井晴美 発行所 七月堂 発行日 2025年9月15日 四六判 88ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ひかりさくかえりみち / 都圭晴【新本・七月堂書籍】
¥1,870
都圭晴第一詩集 確固とした抒情の世界をもつ作者の、 これは新たな道行きのための力強い第一歩だ。 ――細見和之 【作品紹介】 でこぼこ道の帰りに 透明傘は雨に降られている 僕に似たでこぼことした道路には 水たまりがあり 届きそうで 手の届かない白い朝と 傘をもった僕が ふるえて ゆられている 意味なんて忘れて 雨音のなか 生まれては消える波紋の時をみつめている 白い光が包み込んでいる どうしてだろう 僕や白い朝が そっと拾われていく そして 沈むことなく 抱きとられている この道は 子どもたちが登下校する それが なんだかうれしく 抱かれることがわからなくても 白い空が広がっていればいいのだと思う 理由なんてない景色に 生きてていいよと言われているような 繰り返し続いていく時間 白い空の続くでこぼこ道を 靴を濡らして帰っている 著者 都圭晴 発行所 七月堂 発行日 2025年8月19日 四六判 104ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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【2刷】カステーラのような明るい夜 / 尾形亀之助,西尾勝彦 編集【七月堂書籍・新本】
¥2,200
月あかりの静かな夜る ― 私は とぎれた夢の前に立ちどまっている 「この詩集を、未知の読者、未来の人びとに捧げます。」 ──編者 西尾勝彦 尾形亀之助や天野忠に影響されて詩を書き始めたという、奈良在住の詩人西尾勝彦さんに編集していただき、尾形亀之助の新詩集を発行いたしました。 装画に、版画家でイラストレーターの保光敏将さんをお迎えし、装幀をクラフト・エヴィング商會さんにご担当いただき、これ以上なく素朴で贅沢な詩集の誕生です。 校正は航星舎の高松正樹さんがご担当くださり、本文はすべて原典をあたって、旧仮名遣いを新仮名遣いに改めました。 今なお、鮮やかにくり広げられる亀之助の詩を、どうぞご堪能ください。 定 価 本体 ¥2000+税 本 文 154ページ 製 本 仮フランス装 四六判変形 編 集 西尾勝彦 校 正 航星舎 装 画 保光敏将 装 幀 クラフト・エヴィング商會 発行所 七月堂 発 行 2021年10月17日 二 刷 2025年7月27日 ISBN 978-4-87944-466-0 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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半夏生【新本】
¥2,200
松井ひろか詩集 花の首を薙ぐように 殺めたくなってもなお愛し続けたい あなたに告ぐ ヒッチコックの映画『マーニー』の現代版を目指して書き始めたわけだが、或る「女掏摸」、或る「女ストーカー」の告白となってしまった。しかしこれは、罪に満ち溢れたアクチュアリティをどうにか生き切ろうとする私たちにとって必然の流れだったと思っている。一方で、この詩集を不器用でツンデレな半生を捧げた一途な想いの丈を語り出したひとりの女の裸像に迫る「永遠の愛」のドキュメントとして読んでいただけたら幸いである。私は青空の下にその咎をさらす覚悟だ。 【作品紹介】 つぎのベンチまで こがね色に輝く白樺林 心奥にちろちろと炎が燻る暮れ方に 小雪が舞う 母親が鍋に火を入れ 子どもたちが家々に帰り着く刻だ 野犬の遠吠え 朽ちかけたベンチに わたしたちは腰かける 祖国を追われた小説家 その透き徹る眼 のぞきこむと映っている 極寒の強制収容所で赤むらさき色に腫れたしもやけの足先 がん病棟で最期のちからをふりしぼり微笑む男のくちもと しろい息を吐く 手のひらにのった粉雪を 舌で掬う わたしはここで待っています 二度と会うことはないひとを わたしを笑って 笑って やさしく頰をつねって ねえ あまやかに首を絞めて 眼を醒させて 東京が薄明を迎えるころに突きつけられた現実 もう一度 死ねと言われるまで 待っていますから 北の街 郊外の夕べ なぜ ひとりでここまで来たのだろう つまらないひとに囚われたまま わたしはいつまで生きるのだろう こがね色に輝く白樺林 いずれ散ってしまうのに どうして美しく色づくの いま眼前にいる小説家の 清んだ瞳にわたしの眉間は射抜かれる ながれる沈黙を どちらからともなく破った もう少し歩きますか あなたが望むなら つぎのベンチまで *アレクサンドル・ソクーロフ監督ドキュメンタリー作品『ソルジェニーツィンとの対話』参照 著者 松井ひろか 発行所 七月堂 発行日 2025年7月1日 130×200mm 102ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ヤカモチ【新本】
¥2,750
三井喬子詩集 殺された生き物たちが光っている 生きるか死ぬか、 もちろん わたしは食べるのだ。 【作品紹介】 白い牝牛 暮れつかた、家の内でも外でもないところ、境界としも言うべきか、繰り返し繰り返す波、風音、痛みかも知れない違和感の、差し迫った呼吸、濡れた、温かい感触の、水かも知れない揺らぎを反芻する、月夜の、 月夜の牝牛。 軒下で生まれたててなし児、目ばかり黒々大きくて、本当に牛の子かな、白いあたしの子供かな、あれ一人、あれふたぁりと、あたしのお乳呑んで、争うこともない消耗の、月光のせいばかりとは言えますまいに、しらじらと月夜の、 月夜の子供。 連れ立って、延々と、粛々と、しらじらと、お乳飲むのは何の為やら誰の為やら、張った乳房は痛くって、光燦々、昔話の笛すすり泣き、訳を尋ねれば裂けた傷跡、十三の、不信の宵は寒々と、空など見たくないと言いまして、月夜の、 月夜の軒下。 詮方ない理由がありまして、木の葉一枚の捨て状つけて、牛の子供差し上げますドンと持ってけぇ、切るなと煮るなと勝手だと、思うだけなら罪でも何でもありますまいに、黙って連れて行くとは、風の、自分だって育てられない風の、月夜の、 月夜の錯乱。 著者 三井喬子 発行所 七月堂 発行日 2025年6月30日 四六判 110ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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かけらを掬う / 春本あづさ【七月堂書籍・新本】
¥2,750
春本あづさ詩集 誰もが経験するようなさりげない場面、日々にまぎれてすぐ見失いがちな一瞬の光を春本さんはやわらかくて強い手のひらに似た詩の言葉で掬い取って差し出してくれる ユーモラスで、味わい深くて、いつのまにかちょっと泣きそうになりながら こんなふうに見つめていい、書いていい、こんなふうに生きているんだから、と 私自身が解き放たれて励まされる気持ちになっていた ーー川口晴美 【作品紹介】 青い空の中 歩き続ける仕事に疲れて 公園のベンチにあおむけに横になった 青い空しか見えなくなった 足にじーんと血が通いはじめる 荷物をしょっていた背中の重さが ベンチにすいこまれていく このままずっとあおむけのまま 重さのない体になって 青い空の中に ゆらゆらとただよっていたい 著者 春本あづさ 発行所 七月堂 発行日 2025年6月30日 四六判 188ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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星を抱く、子どもたち / 神泉薫【七月堂書籍・新本】
¥1,760
神泉薫詩集 人類のページは まっさらな 余白 読み解けないほど まぶしいまま 【作品紹介】 緑葉の 今朝 あなたを縁取っていたものを 数える ひとつぶひとつぶの 透き通った滴たち 丸い宮殿には 日々の澱を潜りぬけた 循環という名の営みだけが 映し出されている 傘を打つ 雨音を慈しむ 弾けるリズムは あの空からの伝言 遠い血の 積み重ねられた息のひとつを 覚えている 行と行の狭間に落とされた鳩の足跡 確かな飛翔が 地球の回転の わずかな傾きに寄り添っていたことを わたくしたちの眼裏に 刻まれてゆく緑葉の 指折り数える四季 いくつ巡ったか 幻の 幼い指は いつまでも折れることに戸惑い 山梔子の香りに満ちた あてどない永遠に 焦がれたまま 著者 神泉薫 発行所 七月堂 発行日 2025年6月25日 176×128mm 82ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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生の丈 / 神長善次【七月堂書籍・新本】
¥2,750
神長善次詩集 今歩いている人生とは、いったい何だろうか? 直に伸びゆく青少年、深みを増す壮年、年と共に高みに向かって変化成長する人生の「生の丈」をいかに生きるか!? 【作品紹介】 平安 書斎のテラスの揺り椅子に 身を深々と沈めつつ 何思うともなく見る空は コバルトブルー一色の ただそればかりの青さなり アラブに流れる祈りの前の 時は青さに吸われゆき 心は青さに癒されて 静かな安らぎ一色の ただそればかりの世界なり 著者 神長善次 発行所 七月堂 発行日 2025年6月18日 A5判 188ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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箱庭 / 神山紗良【七月堂書籍・新本】
¥1,980
神山紗良詩集 ずっと先の未来は 選んだものでなくてもいい 【作品紹介】 第七児童遊園 砂の地面に いくつかの足跡がついていた しばらくぶりに 上のほうを見た プラタナスの葉が とても高いところで揺れていた 音もさせずに柔らかく揺れていた 雨が降った後は こんなふうに完全な均衡が 訪れることがある 著者 神山紗良 発行所 七月堂 発行日 2025年6月15日 四六判 120ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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光るリム / 千石英世【七月堂書籍・新本】
¥1,980
千石英世詩集 詩の舌よ 憶えよ あの空は この空と 【作品紹介】 波の記憶 船に乗ったことがないのに 波の記憶がある 大きな海を船で渡ったことがないのに 海の深さをしっている 快晴の空の下だった もう陸の影は見えない 水平線がゆれている 私はここまで波の上を歩いてきたのだ 垂らした手が波のしぶきでぬれている 私は波の上に立っている 足もとで波が盛りあがる 鼻先にせりあがり 沈みはじめる 足もとが割れて 海が割れてゆく くずれる くずれてゆく海が くずれてゆく海にのみこまれて 海のなかを流れる川になる 巨大な川だ 大河になって 流れてゆく 海をひきずりながら流れてゆく 水平線に向かって 流れてゆく その先は ナイアガラだ ナイアガラの水しぶきが見えてくる 水しぶきのむこうは 奈落だ 巨大な川がしぶきのくらがりへ落ちてゆく 銀河になって 落ちてゆく 落ちてゆくさきは 奈落だ 銀河が傾く 奈落の底を照らしだす 傾いたまま奈落の底にゆっくり落ちてゆく とおくでしぶきがあがった 底が割れたのだ 割れて 底が裏返しになっている また裏返る 大きくゆれている 割れた底なのに ひかる底になっている 沈んでゆく 割れたのに 上へ 上へ 上へ 大きな川が 海のなかをゆったりと流れていた 海を割って広がりつづけていた 川が海の広がりになって流れている 水平線に届くところまで海になっている どこまでもつづく快晴の空の下だった 私は大きなひかりの底を見上げていたのだ ひかりの底はゆれていた 割れていた 割れたまま広がってゆく 水平線を越えたむこうまで もう何もない空のむこうまで ひかりが割れてゆく 銀河の轟音が耳の上で渦巻いているのだ 著者 千石英世 発行所 七月堂 発行日 2025年5月5日 150×130mm 120ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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四行集【新本】
¥3,300
四行詩は歌う、過去も未来も自由自在に 本詩集は7章に分かれている。 追憶詩篇、諦念詩篇、広島詩篇、大学詩篇、時間詩篇、生活詩篇、父母詩篇となっている。 広島詩篇は17年間過ごした広島の街の人々や情景が描かれている。 潮の満ち引きによって変わる川の水位のように、詩人は日々を紡いでいく。 その後東京へ移り両親を看取ることになる。 まさに「人」の日常の世界へ「四行」が導いてくれる。 【作品紹介】 切ない記憶 小学五年の春の日に クラスのかわいい女の子 小学五年の春の日よ 遠くに転校していった 時に及んで それほど励んだ学問も 大した成果は出なかった 売れない著書を手にとって 我が身の非才をただ嘆く 流川十景 其七 身を沈める日 キャリーバッグを引きずって 若い女が店に着く 「ここだ、ここだ」とつぶやいて 扉に半分身を入れる 書斎にて 平凡な講義を終えて 夜遅く机に向かう 広大な学問の野で 僕は心に火を放つ 三十代で脳死した臓器提供者の女性を思う さぞかし無念だったでしょう あなたの最期の贈り物 尊いあなたの腎臓は 私の体で生きています 老人ホーム入居日 またすぐ帰る気安さで 母は素直に家を出た 僕らは秘かに知っていた これが最後になることを 著者 西原大輔 ブックデザイン 水野愛 発行所 七月堂 発行日 2025年5月1日 四六判 162ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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素描画誌 第二号 ほどける手【新本】
¥1,100
SOLD OUT
このたび七月堂は、古井フラの詩画集「素描画誌」第二号「ほどける手」を刊行いたします。 ↓詳細はこちらnoteにて↓ https://note.com/shichigatsudo/n/n346f6dffa245 ↓「素描画誌」創刊号の詳細はこちら↓ https://note.com/shichigatsudo/n/nc1e2633ba9ca 創刊号「色のない花」お買い物はこちらから https://shichigatsud.buyshop.jp/items/97349523 「描くこと」や「空白」について、深く思索し実践した、画詩文一体の作品集。3ヶ月ごとに全10回の刊行を予定しております。 第2号のテーマは「ほどける手」。 本作は詩と素描画とエッセイで構成されています。 「わたし」というたった一つのものを握りしめて生きること、緩やかにほどき広がっていくこと。 ゆっくりとお楽しみいただけましたら幸いです。 手といえば、「素描画誌」は七月堂社内で印刷し、一冊一冊スタッフの手によって糸綴じ製本をしております。 ほどける・握りしめる、といった、手の動きのような心の往来は、生きる上でとても大切なことです。そしてわたしたちが特に心がけた方がよいのは、ゆるめてほどけることではないでしょうか。握りしめることは充分すぎるほど、幼いころからやってきたのですから。 ーーー素描画誌「ほどける手」より引用 著者┆古井フラ 絵・装幀・組版┆著者 印刷・製本・発行┆七月堂 A5判・糸綴じ 32ページ 価格 1,000円+税 発行 4月22日 発売 4月20日 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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放生会 / インカレポエトリ叢書31【新本】
¥990
緒方水花里詩集 はなの蜜すわせてください 【作品紹介】 おもいはかるくなかった 肉だ肉だと触って 袋を丸くならせ にくい詰まりにただ 手を加えないで まとめないで来ないで しまって 毎朝平に 棒にならして 129gのタンパク質 200gの野菜 71gの玄米 を腫らした 呑み込んだ 四角い箱の後で 動くいや蹲る憂く 止めないで マシュマロとチョコレート 足を引きたい からだ しただって したって涙が 満ちて のこしはあって だけどもうはいって 要らないって 凝っていた 本当だね。 笑えた そうそこに やっとはいって あいが やっと いて 著者 緒方水花里 発行所 七月堂 発行日 2025年4月10日 四六判 96ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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Melody【新本】
¥2,750
不在のあなたの生が燦く一瞬、夏の雨のように詩は生まれる。 ――河津聖恵 朝妻誠は彷徨う人だ。 インドを彷徨い、地球を彷徨う。 いや、あの世も彷徨っているのかもしれない。 鳴り止まない孤独なメロディはこの詩集から旅立ってゆく。 Rainy 「レイニー!」とあなたは言った。雨が降り出したのだ と思う。昼間の強くて短い雨の時間が終ると、空に薄い 半円の虹が出て、僕たちはそれをしばらく眺めていた。 それから僕はあなたと何か冷たいものを買いに出かけた はずだ。太陽はまた元に戻っていて、僕たちは歩きなが ら汗をかいていた。夏の陽射しは強い。真夏は太陽の光 の加減で、木立の葉陰が洞窟のように見えてしまうこと がある。僕はその日、その洞窟の中で何かが見えたよう な気がした。そしてそのときなぜか僕は、あなたが僕と 同じものを見たのではないかと思ったのだ。あなたはこ の国に生まれた人ではないのに。 あなたに初めて会ったのはひどい風で朝から雪の降り 続く寒い冬の日だった。夜になると風は治まったけれど、 街は本当に真っ白になった。僕の街の小さな駅の待合室 にいたあなたは、誰かを探している様子だったのだが、 僕の顔を見るなり、「スノー!」と言ったのだ。僕は傘 を持っていたから、あなたを街の小さなホテルまで送っ て行った。湿った雪が僕の傘にひどく重く降り積った。 あなたからの手紙が届いたのは、春になって日差しが暖 かくなってきた日の午後だった。なんだか僕に何を伝え たいのかよくわからない手紙だった。それからしばらく して、あなたは突然僕の街に現れたのだ。 あなたと暮らしたのは何年間だったのだろうか。もう、 はっきり憶えていない。誰にも言わなかったけれど、僕 たちは僕たちにしか見えないものが見えたから、よく二 人でくすくす笑いながら囁き合ったりした。あの人、本 当は小さな女の子と暮らしていたんだよね、とか、本当 にどうでもいいようなことばかりを。僕たちはなんだか おかしな二人に見えたのかもしれないね。いや、僕たち のことなんて、この街の人たちはそんなに興味がなかっ たのかもしれないけれど。 あなたに一度だけ触れたことがある。あなたの白い服 を脱がすと、あなたの温かい乳房はとても柔らかくて、 僕はなんだか安心してしまった。そして熱くて濡れてい て、なんだか懐かしいやさしい性器だった。でも僕たち は性交なんて一度で飽きてしまって、二人でベッドの中 でふざけながら、昨日や一昨日の夢で見た場所や現実に 行った場所のことなど、長い時間をかけて語り合うこと の方が多かったのだ。 あれから何度も夏が来て、何度も秋が来て、季節は変 わり続けて、時間はどんどん経っていった。あなたから 来た手紙はテーブルの上に重なり続けた。最後の手紙に は写真が入っていた。まるであなたの心だけが身体から 抜け出して同封されて僕の街に届いたみたいだった。あ なたはベッドで微笑んでいた。髪の毛は白くなっていた。 僕はまたあなたのサラサラだった長い金色の髪を思い出 してしまう。 あなたのいなくなったこの部屋に、あなたの古い写真 がある。写真はただの切り取られた時間だ。何を話しか けてもあなたはずっと微笑んだままだから。夏の日、雨 が降りそうになると、今でもどこからか「レイニー!」 というあなたの声が聞こえるような気がする。とても会 いたいけれど、僕ももうこの国から出られない身体なの かもしれない。今日もあなたに届くかどうかもわからな い手紙を書き続けている。いま季節は秋だが、もう冬が 近づいているのだ。 著者 朝妻誠 帯文 河津聖恵 ブックデザイン 川島雄太郎/川島康太郎 発行所 七月堂 発行日 2025年2月28日 四六判 124ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ハルシネーション / 草間小鳥子【七月堂書籍・新本】
¥1,980
草間小鳥子第3詩集 第75回H氏賞受賞!! 草間小鳥子は誰よりも世界に向き合っている。それがたとえ事後の幻影的現実(ハルシネーション)であろうと、その詩的変容を夢見てやまないのだ。 ――野村喜和夫 生成AIが普及し、ディープフェイクなどが日常に侵入してきたことで、虚構が現実のように現実が虚構のように現れる世界を見つめようとする41篇の詩を収録。 ※ハルシネーション(hallucination) ・幻覚、幻影。 ・AI(人工知能)が誤った情報を生成する現象のこと。 【作品紹介】 みちゆき ほんとうに暗いときにしか 光らない雪が 道行きを仄青く照らしている 光るのはうつくしいからではない 踏み越えられなかった弱さやずるさ すべての塵が ほかの光を さめざめと照り返すから 敷き詰められた雪のうえに 固く目を閉じ汚れた昨日が 道標のように発光している 著者 草間小鳥子 発行 七月堂 ブックデザイン 川島康太郎+川島雄太郎 発行日 2024年10月25日 四六判 168ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
