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半夏生【新本】
¥2,200
松井ひろか詩集 花の首を薙ぐように 殺めたくなってもなお愛し続けたい あなたに告ぐ ヒッチコックの映画『マーニー』の現代版を目指して書き始めたわけだが、或る「女掏摸」、或る「女ストーカー」の告白となってしまった。しかしこれは、罪に満ち溢れたアクチュアリティをどうにか生き切ろうとする私たちにとって必然の流れだったと思っている。一方で、この詩集を不器用でツンデレな半生を捧げた一途な想いの丈を語り出したひとりの女の裸像に迫る「永遠の愛」のドキュメントとして読んでいただけたら幸いである。私は青空の下にその咎をさらす覚悟だ。 【作品紹介】 つぎのベンチまで こがね色に輝く白樺林 心奥にちろちろと炎が燻る暮れ方に 小雪が舞う 母親が鍋に火を入れ 子どもたちが家々に帰り着く刻だ 野犬の遠吠え 朽ちかけたベンチに わたしたちは腰かける 祖国を追われた小説家 その透き徹る眼 のぞきこむと映っている 極寒の強制収容所で赤むらさき色に腫れたしもやけの足先 がん病棟で最期のちからをふりしぼり微笑む男のくちもと しろい息を吐く 手のひらにのった粉雪を 舌で掬う わたしはここで待っています 二度と会うことはないひとを わたしを笑って 笑って やさしく頰をつねって ねえ あまやかに首を絞めて 眼を醒させて 東京が薄明を迎えるころに突きつけられた現実 もう一度 死ねと言われるまで 待っていますから 北の街 郊外の夕べ なぜ ひとりでここまで来たのだろう つまらないひとに囚われたまま わたしはいつまで生きるのだろう こがね色に輝く白樺林 いずれ散ってしまうのに どうして美しく色づくの いま眼前にいる小説家の 清んだ瞳にわたしの眉間は射抜かれる ながれる沈黙を どちらからともなく破った もう少し歩きますか あなたが望むなら つぎのベンチまで *アレクサンドル・ソクーロフ監督ドキュメンタリー作品『ソルジェニーツィンとの対話』参照 著者 松井ひろか 発行所 七月堂 発行日 2025年7月1日 130×200mm 102ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ヤカモチ【新本】
¥2,750
三井喬子詩集 殺された生き物たちが光っている 生きるか死ぬか、 もちろん わたしは食べるのだ。 【作品紹介】 白い牝牛 暮れつかた、家の内でも外でもないところ、境界としも言うべきか、繰り返し繰り返す波、風音、痛みかも知れない違和感の、差し迫った呼吸、濡れた、温かい感触の、水かも知れない揺らぎを反芻する、月夜の、 月夜の牝牛。 軒下で生まれたててなし児、目ばかり黒々大きくて、本当に牛の子かな、白いあたしの子供かな、あれ一人、あれふたぁりと、あたしのお乳呑んで、争うこともない消耗の、月光のせいばかりとは言えますまいに、しらじらと月夜の、 月夜の子供。 連れ立って、延々と、粛々と、しらじらと、お乳飲むのは何の為やら誰の為やら、張った乳房は痛くって、光燦々、昔話の笛すすり泣き、訳を尋ねれば裂けた傷跡、十三の、不信の宵は寒々と、空など見たくないと言いまして、月夜の、 月夜の軒下。 詮方ない理由がありまして、木の葉一枚の捨て状つけて、牛の子供差し上げますドンと持ってけぇ、切るなと煮るなと勝手だと、思うだけなら罪でも何でもありますまいに、黙って連れて行くとは、風の、自分だって育てられない風の、月夜の、 月夜の錯乱。 著者 三井喬子 発行所 七月堂 発行日 2025年6月30日 四六判 110ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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かけらを掬う【新本】
¥2,750
春本あづさ詩集 誰もが経験するようなさりげない場面、日々にまぎれてすぐ見失いがちな一瞬の光を春本さんはやわらかくて強い手のひらに似た詩の言葉で掬い取って差し出してくれる ユーモラスで、味わい深くて、いつのまにかちょっと泣きそうになりながら こんなふうに見つめていい、書いていい、こんなふうに生きているんだから、と 私自身が解き放たれて励まされる気持ちになっていた ーー川口晴美 【作品紹介】 青い空の中 歩き続ける仕事に疲れて 公園のベンチにあおむけに横になった 青い空しか見えなくなった 足にじーんと血が通いはじめる 荷物をしょっていた背中の重さが ベンチにすいこまれていく このままずっとあおむけのまま 重さのない体になって 青い空の中に ゆらゆらとただよっていたい 著者 春本あづさ 発行所 七月堂 発行日 2025年6月30日 四六判 188ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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星を抱く、子どもたち【新本】
¥1,760
神泉薫詩集 人類のページは まっさらな 余白 読み解けないほど まぶしいまま 【作品紹介】 緑葉の 今朝 あなたを縁取っていたものを 数える ひとつぶひとつぶの 透き通った滴たち 丸い宮殿には 日々の澱を潜りぬけた 循環という名の営みだけが 映し出されている 傘を打つ 雨音を慈しむ 弾けるリズムは あの空からの伝言 遠い血の 積み重ねられた息のひとつを 覚えている 行と行の狭間に落とされた鳩の足跡 確かな飛翔が 地球の回転の わずかな傾きに寄り添っていたことを わたくしたちの眼裏に 刻まれてゆく緑葉の 指折り数える四季 いくつ巡ったか 幻の 幼い指は いつまでも折れることに戸惑い 山梔子の香りに満ちた あてどない永遠に 焦がれたまま 著者 神泉薫 発行所 七月堂 発行日 2025年6月25日 176×128mm 82ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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生の丈【新本】
¥2,750
神長善次詩集 今歩いている人生とは、いったい何だろうか? 直に伸びゆく青少年、深みを増す壮年、年と共に高みに向かって変化成長する人生の「生の丈」をいかに生きるか!? 【作品紹介】 平安 書斎のテラスの揺り椅子に 身を深々と沈めつつ 何思うともなく見る空は コバルトブルー一色の ただそればかりの青さなり アラブに流れる祈りの前の 時は青さに吸われゆき 心は青さに癒されて 静かな安らぎ一色の ただそればかりの世界なり 著者 神長善次 発行所 七月堂 発行日 2025年6月18日 A5判 188ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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箱庭【新本】
¥1,980
神山紗良詩集 ずっと先の未来は 選んだものでなくてもいい 【作品紹介】 第七児童遊園 砂の地面に いくつかの足跡がついていた しばらくぶりに 上のほうを見た プラタナスの葉が とても高いところで揺れていた 音もさせずに柔らかく揺れていた 雨が降った後は こんなふうに完全な均衡が 訪れることがある 著者 神山紗良 発行所 七月堂 発行日 2025年6月15日 四六判 120ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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光るリム【新本】
¥1,980
千石英世詩集 詩の舌よ 憶えよ あの空は この空と 【作品紹介】 波の記憶 船に乗ったことがないのに 波の記憶がある 大きな海を船で渡ったことがないのに 海の深さをしっている 快晴の空の下だった もう陸の影は見えない 水平線がゆれている 私はここまで波の上を歩いてきたのだ 垂らした手が波のしぶきでぬれている 私は波の上に立っている 足もとで波が盛りあがる 鼻先にせりあがり 沈みはじめる 足もとが割れて 海が割れてゆく くずれる くずれてゆく海が くずれてゆく海にのみこまれて 海のなかを流れる川になる 巨大な川だ 大河になって 流れてゆく 海をひきずりながら流れてゆく 水平線に向かって 流れてゆく その先は ナイアガラだ ナイアガラの水しぶきが見えてくる 水しぶきのむこうは 奈落だ 巨大な川がしぶきのくらがりへ落ちてゆく 銀河になって 落ちてゆく 落ちてゆくさきは 奈落だ 銀河が傾く 奈落の底を照らしだす 傾いたまま奈落の底にゆっくり落ちてゆく とおくでしぶきがあがった 底が割れたのだ 割れて 底が裏返しになっている また裏返る 大きくゆれている 割れた底なのに ひかる底になっている 沈んでゆく 割れたのに 上へ 上へ 上へ 大きな川が 海のなかをゆったりと流れていた 海を割って広がりつづけていた 川が海の広がりになって流れている 水平線に届くところまで海になっている どこまでもつづく快晴の空の下だった 私は大きなひかりの底を見上げていたのだ ひかりの底はゆれていた 割れていた 割れたまま広がってゆく 水平線を越えたむこうまで もう何もない空のむこうまで ひかりが割れてゆく 銀河の轟音が耳の上で渦巻いているのだ 著者 千石英世 発行所 七月堂 発行日 2025年5月5日 150×130mm 120ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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四行集【新本】
¥3,300
四行詩は歌う、過去も未来も自由自在に 本詩集は7章に分かれている。 追憶詩篇、諦念詩篇、広島詩篇、大学詩篇、時間詩篇、生活詩篇、父母詩篇となっている。 広島詩篇は17年間過ごした広島の街の人々や情景が描かれている。 潮の満ち引きによって変わる川の水位のように、詩人は日々を紡いでいく。 その後東京へ移り両親を看取ることになる。 まさに「人」の日常の世界へ「四行」が導いてくれる。 【作品紹介】 切ない記憶 小学五年の春の日に クラスのかわいい女の子 小学五年の春の日よ 遠くに転校していった 時に及んで それほど励んだ学問も 大した成果は出なかった 売れない著書を手にとって 我が身の非才をただ嘆く 流川十景 其七 身を沈める日 キャリーバッグを引きずって 若い女が店に着く 「ここだ、ここだ」とつぶやいて 扉に半分身を入れる 書斎にて 平凡な講義を終えて 夜遅く机に向かう 広大な学問の野で 僕は心に火を放つ 三十代で脳死した臓器提供者の女性を思う さぞかし無念だったでしょう あなたの最期の贈り物 尊いあなたの腎臓は 私の体で生きています 老人ホーム入居日 またすぐ帰る気安さで 母は素直に家を出た 僕らは秘かに知っていた これが最後になることを 著者 西原大輔 ブックデザイン 水野愛 発行所 七月堂 発行日 2025年5月1日 四六判 162ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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素描画誌 第二号 ほどける手【新本】
¥1,100
このたび七月堂は、古井フラの詩画集「素描画誌」第二号「ほどける手」を刊行いたします。 ↓詳細はこちらnoteにて↓ https://note.com/shichigatsudo/n/n346f6dffa245 ↓「素描画誌」創刊号の詳細はこちら↓ https://note.com/shichigatsudo/n/nc1e2633ba9ca 創刊号「色のない花」お買い物はこちらから https://shichigatsud.buyshop.jp/items/97349523 「描くこと」や「空白」について、深く思索し実践した、画詩文一体の作品集。3ヶ月ごとに全10回の刊行を予定しております。 第2号のテーマは「ほどける手」。 本作は詩と素描画とエッセイで構成されています。 「わたし」というたった一つのものを握りしめて生きること、緩やかにほどき広がっていくこと。 ゆっくりとお楽しみいただけましたら幸いです。 手といえば、「素描画誌」は七月堂社内で印刷し、一冊一冊スタッフの手によって糸綴じ製本をしております。 ほどける・握りしめる、といった、手の動きのような心の往来は、生きる上でとても大切なことです。そしてわたしたちが特に心がけた方がよいのは、ゆるめてほどけることではないでしょうか。握りしめることは充分すぎるほど、幼いころからやってきたのですから。 ーーー素描画誌「ほどける手」より引用 著者┆古井フラ 絵・装幀・組版┆著者 印刷・製本・発行┆七月堂 A5判・糸綴じ 32ページ 価格 1,000円+税 発行 4月22日 発売 4月20日 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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放生会 / インカレポエトリ叢書31【新本】
¥990
緒方水花里詩集 はなの蜜すわせてください 【作品紹介】 おもいはかるくなかった 肉だ肉だと触って 袋を丸くならせ にくい詰まりにただ 手を加えないで まとめないで来ないで しまって 毎朝平に 棒にならして 129gのタンパク質 200gの野菜 71gの玄米 を腫らした 呑み込んだ 四角い箱の後で 動くいや蹲る憂く 止めないで マシュマロとチョコレート 足を引きたい からだ しただって したって涙が 満ちて のこしはあって だけどもうはいって 要らないって 凝っていた 本当だね。 笑えた そうそこに やっとはいって あいが やっと いて 著者 緒方水花里 発行所 七月堂 発行日 2025年4月10日 四六判 96ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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Melody【新本】
¥2,750
不在のあなたの生が燦く一瞬、夏の雨のように詩は生まれる。 ――河津聖恵 朝妻誠は彷徨う人だ。 インドを彷徨い、地球を彷徨う。 いや、あの世も彷徨っているのかもしれない。 鳴り止まない孤独なメロディはこの詩集から旅立ってゆく。 Rainy 「レイニー!」とあなたは言った。雨が降り出したのだ と思う。昼間の強くて短い雨の時間が終ると、空に薄い 半円の虹が出て、僕たちはそれをしばらく眺めていた。 それから僕はあなたと何か冷たいものを買いに出かけた はずだ。太陽はまた元に戻っていて、僕たちは歩きなが ら汗をかいていた。夏の陽射しは強い。真夏は太陽の光 の加減で、木立の葉陰が洞窟のように見えてしまうこと がある。僕はその日、その洞窟の中で何かが見えたよう な気がした。そしてそのときなぜか僕は、あなたが僕と 同じものを見たのではないかと思ったのだ。あなたはこ の国に生まれた人ではないのに。 あなたに初めて会ったのはひどい風で朝から雪の降り 続く寒い冬の日だった。夜になると風は治まったけれど、 街は本当に真っ白になった。僕の街の小さな駅の待合室 にいたあなたは、誰かを探している様子だったのだが、 僕の顔を見るなり、「スノー!」と言ったのだ。僕は傘 を持っていたから、あなたを街の小さなホテルまで送っ て行った。湿った雪が僕の傘にひどく重く降り積った。 あなたからの手紙が届いたのは、春になって日差しが暖 かくなってきた日の午後だった。なんだか僕に何を伝え たいのかよくわからない手紙だった。それからしばらく して、あなたは突然僕の街に現れたのだ。 あなたと暮らしたのは何年間だったのだろうか。もう、 はっきり憶えていない。誰にも言わなかったけれど、僕 たちは僕たちにしか見えないものが見えたから、よく二 人でくすくす笑いながら囁き合ったりした。あの人、本 当は小さな女の子と暮らしていたんだよね、とか、本当 にどうでもいいようなことばかりを。僕たちはなんだか おかしな二人に見えたのかもしれないね。いや、僕たち のことなんて、この街の人たちはそんなに興味がなかっ たのかもしれないけれど。 あなたに一度だけ触れたことがある。あなたの白い服 を脱がすと、あなたの温かい乳房はとても柔らかくて、 僕はなんだか安心してしまった。そして熱くて濡れてい て、なんだか懐かしいやさしい性器だった。でも僕たち は性交なんて一度で飽きてしまって、二人でベッドの中 でふざけながら、昨日や一昨日の夢で見た場所や現実に 行った場所のことなど、長い時間をかけて語り合うこと の方が多かったのだ。 あれから何度も夏が来て、何度も秋が来て、季節は変 わり続けて、時間はどんどん経っていった。あなたから 来た手紙はテーブルの上に重なり続けた。最後の手紙に は写真が入っていた。まるであなたの心だけが身体から 抜け出して同封されて僕の街に届いたみたいだった。あ なたはベッドで微笑んでいた。髪の毛は白くなっていた。 僕はまたあなたのサラサラだった長い金色の髪を思い出 してしまう。 あなたのいなくなったこの部屋に、あなたの古い写真 がある。写真はただの切り取られた時間だ。何を話しか けてもあなたはずっと微笑んだままだから。夏の日、雨 が降りそうになると、今でもどこからか「レイニー!」 というあなたの声が聞こえるような気がする。とても会 いたいけれど、僕ももうこの国から出られない身体なの かもしれない。今日もあなたに届くかどうかもわからな い手紙を書き続けている。いま季節は秋だが、もう冬が 近づいているのだ。 著者 朝妻誠 帯文 河津聖恵 ブックデザイン 川島雄太郎/川島康太郎 発行所 七月堂 発行日 2025年2月28日 四六判 124ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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ハルシネーション【新本】
¥1,980
草間小鳥子第3詩集 第75回H氏賞受賞!! 草間小鳥子は誰よりも世界に向き合っている。それがたとえ事後の幻影的現実(ハルシネーション)であろうと、その詩的変容を夢見てやまないのだ。 ――野村喜和夫 生成AIが普及し、ディープフェイクなどが日常に侵入してきたことで、虚構が現実のように現実が虚構のように現れる世界を見つめようとする41篇の詩を収録。 ※ハルシネーション(hallucination) ・幻覚、幻影。 ・AI(人工知能)が誤った情報を生成する現象のこと。 【作品紹介】 みちゆき ほんとうに暗いときにしか 光らない雪が 道行きを仄青く照らしている 光るのはうつくしいからではない 踏み越えられなかった弱さやずるさ すべての塵が ほかの光を さめざめと照り返すから 敷き詰められた雪のうえに 固く目を閉じ汚れた昨日が 道標のように発光している 著者 草間小鳥子 発行 七月堂 ブックデザイン 川島康太郎+川島雄太郎 発行日 2024年10月25日 四六判 168ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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花下一睡【新本】
¥2,750
SOLD OUT
秋山基夫詩集 第43回現代詩人賞受賞!! 〈 詩 〉の始原へ 終わらない夢幻劇 【作品紹介】 はぎ 先ごろ思いもかけぬ幸いにて宮城野に参りました あわわあわわと萩を分け露に濡れつつ歩みました 歩めども歩めども萩の花萩の露萩の花萩の露です 薄闇にしゃがむと西行法師の歌が聞こえてきます あはれ いかに 草葉の露のこぼるらむ 秋風立ちぬ宮城野の原 するとほんとうに風が吹いてきましたいちめんに むすうの露がむすうの萩の花からこぼれています あわわあわわと花を分け露に濡れつつ歩みました 月が昇りました銀の世界で馬鹿になってしまった 美しいお方のしゃれこうべがいまも転がっていて 萩の露を舌のない口をあけてのんでいるでしょう むかし郊外に 住んでいた頃 休日の夕方には 妻とよく散歩に出た 道ばたに萩を見つけ これが萩だと教え 顔を近づけ うす紫の小さな花を 暗くなるまで見ていた 何十年も過ぎてしまった病み衰え何もかも失って 白い壁の部屋で白い天井をただぼんやり見ている 著者 秋山基夫 発行所 七月堂 発行日 2024年4月1日 A5判変形 112ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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【7/12 開催】ことばあつめの夜 オンライン参加キット・今夜の一冊付
¥5,890
【ご注意ください】 いつもご利用いただきありがとうございます。 こちらの商品は、ことばあつめの夜 (オンライン参加キット・今夜の一冊付)のご予約ページです。 配信を通して、オンラインでご参加いただく方のためのご予約となります。 【現地参加の方はコチラより】 https://shichigatsud.buyshop.jp/items/100160513 「ことばあつめの夜」を、実際に店舗に来られない方にも参加していただけるようにキットを販売しております。 ことばあつめの夜は、閉店後の七月堂古書部のあかりを消して、ランタンを持ってお過ごしいただくイベントです。 店内は「ことばポスト」と投稿用紙があるので、そこにその日生まれたことばを書いていただきます。 詳細は以下のリンクよりご確認ください。 イメージビデオ https://www.youtube.com/watch?v=onB_PohF9vk 【参加方法】 ①七月堂古書部ECサイトにて、キットをご購入ください。 今回の「今夜の一冊」は七月堂刊行の柊有花『旅の心を取り戻す』です。 こちらの一冊から、気になったり好きな詩を引用して書いていただくことも可能です。 (引用文については原文と表記が食い違っていた場合、原文ママに整えて掲載いたします。) お送りする内容は以下になります。 ・投稿用紙 ・柊有花 詩画集 『旅の心を取り戻す』1冊 ・その日の夜に集まった言葉をまとめた一冊の本(こちらのみイベント終了後約1~2か月後の発送) ② 当日は部屋の照明を消してお過ごしいただきます。お手元を照らすくらいの灯りをご用意ください。 ③ 当日の時間になりましたら、ことばあつめの夜キットに同封されているQRコードを読み取っていただき七月堂古書部の配信をご覧ください(19:30~21:30)一緒にことばあつめの夜を過ごしましょう。 ※プライベート配信のため、ご参加の際は送られた合言葉をご入力ください。 ④ キットの中の投稿用紙にその時心に浮かんだ言葉をお書きください。エッセイ、日記、詩、短歌、俳句、形式は問いません。 ⑤ 記入済みの投稿用紙の写真を撮って、「kotobaatumenoyoru★gmail.com」まで、タイトルに「ことばあつめの夜」とお書きの上、翌日中までにお送りください。(★を@に変えてください) 【商品内訳】 キットと参加費 800円 その日の夜に集まった言葉をまとめた一冊の本(こちらのみイベント終了後約1~2か月後の発送) 3,000円 柊有花 詩画集 『旅の心を取り戻す』2,090円 一か月~二か月後に、紙とゆびさきさんが一冊ずつ丁寧に製本された、その日の夜にあつまったことばが詰まった本が届きます。 楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。
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紀州・熊野詩集【古本】
¥2,400
SOLD OUT
【状態】 カバー帯付 カバー:上部剥がれ有 著者 吉増剛造、倉田昌紀 発行所 七月堂 発行日 2006年6月19日 A5判 196ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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エレゲイア【新本】
¥1,760
<詩――ポエジー>とは 常に誰からも必要とされぬ その存在そのものをも永遠に黙殺され続けて来た者たち/その言の葉の片々よりも とうの昔に潰え 霧散してゆく定めの者たちよ/しかし言葉(イマージュ)の迷路の中に 一瞬たりとも囚われ惑溺しえたことの/この悦びを 恍惚を/誰が汝らより よりよく知り抜いているというのだろう?/もし<無心(イノセンス)>という夢が<不死(イモータル)>という夢と同じ位リアルな重量を持つのであるのなら/詩人たちほど太陽の黒点を炎やす 究極の謎(エニグマ)を手にしている呪術師もないであろう(「詩人たち」より抜粋) 神官の身ぶりで、語という鉱石を掘り起こし、妻合わせ、舞わせる。 太古の洞から、現代へとつぎつぎに放たれる疑問符の矢。 暗い既知の地平を超えると、明澄な黄泉が立ち上がるのだ。 聞くがよい、血の速さで語る、詩人の連綿を。 寄せては返す、否定と疑問の鬩ぎ合う、潮騒の高鳴りを。 慟哭、自矜、そして遊戯。 この詩人は、逝くことの非情を哀歌(エレゲイア)にうたい上げながら、 実は<詩(ポエジー)>の何たるかを問い続けているのだ。――村松定史 著者 佐々木洋 発行所 七月堂 発行日 2014年8月30日 A5判 92ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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猫式Nyanical / インカレポエトリ叢書30【新本】
¥990
成田凜詩集 わたしがさぁ ほねになっちゃったら どうする? たすけてくれる? 【作品紹介】 Vertical:月への信心 時刻は朝四時四四分、昨夜の気怠さが透明になっていくことだけがわかって います。呆れるほど傾いてしまった形骸のまま、それでもまっすぐに歩きつ づけていられるのは、この心酔のせいだと、誓わせてください。誰のことも 信じていないわけではないのだと。誓わせてください、忽然冷たくなった指 先に、祈らせてください、 蟹みたいにね いなくなるなら赤く光って 先にいって 星(ほし)ほしかった 最も不幸な妄想のために眠り続けることはないのだと 終(つい)えるときには見(め)されるだろうと 再び時刻は朝四時四四分、右目の痛みは水たまりの泥のような濁り具合で、 頭から胸にかけて皮膚のうちがわが散散(ばらばら)になっていくさまはみじめ、本当に みじめでした。忘れていただけのことを勘違いと呼んでいた、好きだという だけのことに終に気がつけなかった、思いなせば、祈れば、よい、と、止め られなかった、のが、みじめ。みじめでした。 樹海の中に海があればよかった よかったってなに 海なんか見たことない でもさざ波にそよがれてみせた やさしさ は青かった 舟を出す、時刻は朝四時四四分。白い砂に沈んでしまいそうなほどゆっくり と歩いてみせました。ゆっくり、ゆっくりと、透明になるための練習をして おくのです。ういてしまうための焼却のレッスンを今のうちにしておきたい のです。みな、舟になるのだから。 時刻はわかりませんでした。目覚めてからずっと水平でいることができず、 くるくると回る、天使みたいに羽(はね)る、白くなる、くるくると回る、はねる、 もっと白くなる、くるくると回る、はねる、はねる、羽る、羽、羽、羽、羽、 羽て白く そして、青っぽい惑星(ほし)にからだは溶(と)られ かわりに 祈ることはできなくなった 真っ黒な まっくろな宇宙に 月が燃えていた 銀色に燃えていた 佐々波美月「きみには歩きにくい星」、梶井基次郎「Kの昇天――或はKの溺死」に寄せて 著者 成田凜 発行所 七月堂 発行日 2025年1月30日 四六判 96ページ 【関連】 インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576 ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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あわいのひと(サイン本あり)【新本】
¥1,760
この星では ときどき なつかしい風が 吹いていますね 『あわいのひと』より …………………… 前作『場末にて』から1年と少しが経ちました。 この冬、西尾勝彦さんの詩集を刊行いたします。 『あわいのひと』というタイトルのこの詩集は、一篇の詩としても、物語としても楽しんでいただける一冊となりました。 日ごろの緊張から解き放たれて、ホッと息をつき、力をぬいて安心できる場所。 それは、この世界のほんの少しだけずれた隣りの部屋にあるのかもしれません。 いえ、本当は、この世界にあるのかもしれません。 穏やかであたたかいものをひとつでも多く。 そんな願いをこめてお届けいたします。 いずれ わたしは いなくなるのです このうつくしい世界から きえさってしまうのです その前にできることは あたたかいものたちを こしらえることなのです 『あわいのひと』より 著者 西尾勝彦 発行所 七月堂 発行日 2025年1月23日 145mm×140mm 84ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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素描画誌 創刊号 色のない花【新本】
¥1,100
このたび七月堂より、古井フラ画詩文『素描画誌』を刊行することとなりました。 年4回、全10回の発行を予定しております。 記念すべき創刊号は、「色のない花」。 詩と散文と素描画から構成される本誌は、七月堂社内でオンデマンド機にて印刷をし、製本もスタッフにて行っています。 毎号100部の限定発行の予定ですが、創刊号は200部の発行となります。 『素描画誌』は、2020年1月に、古井フラさんが自主制作されたものが始まりとなります。 その時は、一冊で完結している雑誌でしたが、内容は同じように、詩と散文と素描で構成されていました。 コロナ禍にそれを手にし、クロッキーが訓練や習作上、修正や消すことのできないという意味において、「消すことができないということは、失敗は残り、失敗は許されている。そこでは成功も失敗も、行為においては等価である」という一文に強く心を射抜かれました。 古井さんの定義するところの「素描」には、主に線描、単色で表した絵の他に、「対象を観察した写生」「線描を主とした描画」「画材は紙と鉛筆、コンテ等」「無彩色」「基本的に決して描き直しをしない」「短時間の描画」(1~10分程度)というものがあって、古井さんの散文を読み進めると、「短時間の描画」という刹那的な瞬間に惹かれていく自分の視線に気がつきます。 時間で測れる瞬間というのは、本当はどれも、立ち上がってはすぐ過去になってしまう「点」のひとつ。 その点を、1秒とみるのか、1分とするのか、10分とするのか。 それによって出現する「瞬間の景色」は、陰影も輪郭も変わってくるのだろうと思います。 ただどの瞬間も、限られているという決まりのなかではすぐに消えてしまうものであり、それを切り取った描画は、すでに過去にあったものである、という事実とともに、しかし、今も生き生きと目の前にあり続けることの存在感と不思議さと哀しみ。 古井さんの意識のなかには、過去、現在、未来、と絶え間なく流れる時間という大きな川が流れていて、たった今、五感で感じとどめられるものを素描画にしている。 そう思ってフラさんの絵を見ると、今日という一日がどれだけ大事であるか。成功も、失敗も、大きな川の流れのなかでは小石くらいのことでしかないかもしれず、よくも悪くも手元に留めておくことはできないのだろうなと思うのです。 そんな風に形にして留めてはおけないからこそ、流れていくなかにおいてもなお、心に残るものたちと少しでも多く触れ、大事にして暮らしていきたい。 古井さんの素描画を見るにつれ、「一瞬」という目には見えない時間の流れを可視化してくれているように思い、あなたはなにを信じたいの?という問いが立ち上がってくるように感じます。 うまく答えられる日もあれば、ない日もあって、それらすべてが愛おしい瞬間だと思えるような。 描くことは、その名を消していくこと ある花を描くことで、その花の固有名詞を消していく この世の形をうつすこと それはつくるというより とどめること そしてとどめることには 一抹の哀しみがある 素描画誌「色のない花」より 著者 古井フラ 発行所 七月堂 発行日 2025年1月22日 A5判 28ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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赤い河を 渡る【新本】
¥2,200
絶望を飛べ 『赤い河を 渡る』は前章「赤い河」と繋ぎの2編、後章「都市の水」からなる。 「赤い河」とはまさに体をめぐるエネルギーの象徴である。 「決心は続くか 窓を開けて明日を見る」その熱が駆け巡る。 「都市の水」とは関中子を取り巻く世界の潮流である。 「ものを考えるのは水の中の唇と一緒にいるようなものだ」と。 そしてその時は戻ってくることは無いと言う。 時の流れな中で言葉は紡がれてゆく。 【作品紹介】 飾る記念樹 夜との関係を変える 初めて見る 初めて知る 初めて体験する 伐採木 移植樹 表土が顕われ風に舞い 休息は人が自在に仕切る空間にある ここに駅前広場 新しい住みか 五本の若い樹 剪定樹 高鳴る振動 震える腕を伸ばす 現れた若い胸 いきなり花を押し出す 葉を帽子のように頂き 何をやり残したのか 何を省略したのか 古く太い見事な幹そして華麗な色と香り 将来を贈る だれに 山中の切通しを渡る橋を見に行って十年余を越え 君はどうしている 都市は走りだす 赤い灯を吐いて 未来 嵐を先物爆買いする 五月のある午後 昨日と別れる 記念写真をとる 笑い 涙 記憶を埋葬する指先 きらきら旧の住みかの入り口に立って陽炎揺れる 早き淵の川 渡り初めの橋に知り人の文字 答えられるか 君は 答えを準備できていただろうか 黄蝶 都市の触角 何本が定型かな いち早く連なって交叉路の信号へ さて 家々に紙面を回覧する 古いと言われる人手で 離れ若葉 雨の後で 人が森を梳いた 雨粒が森をぱらぱらこした 陽のわだちがガラス橋を屈折し 離れ若葉は建設途中を通る 為すべきことに行きつかない水に問いを添えると 雨は止む 葉脈は受けて浮き名立つ 仕上げの風は離れる葉を空高く掬い 思いのつづりを起こし 昨日の空白を縮める 陽に狩られる獲物よ ひかりに報われるようなことをしたか 報いを受けると不安がるよりも 報われるようなことをしたか うつりぎなとりわけうつりぎなきょうのわたし 街路に飛び立つ ついておいで ついてこられるよ 遅すぎるくらいだ 離れ若葉は建設途中を通る どこに芽生えよう 不安など 陽のささめきに心地良く雨が葉から落ちる 傷は癒えるさ 太陽がうわの空で通過する 間には空があるから太陽の疲れは取れるよ 雨は洗ったがその後を ついていけない 早くて 優しすぎるの 著者 関中子 発行所 七月堂 発行日 2025年1月20日 四六判 104ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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サイボーグ の夜【新本】
¥3,300
此処へ来い 早く 今日からあなたと共にいる 日常や福祉や戦争を直接の題材にしていても 技巧の意匠をことさらにまとうことなく 屈託も衒いもない打算もない本詩集の素朴な佇まいこそ 物事の核心を遠巻きにしている傍観者を無心に打つことになる それは詩人の奥深くに澄んだ怒りの一滴を蓄えているからであろう 柴崎 聰 「あゆむ」の哲学 「あゆむ」の体育祭があって 妻のスマホに彼の百メー トル競走の映像が送られて来た 四人でスタートライン に立ち 合図とともに一斉に走り出す 疾走する子ども たちから遅れて 腕でバランスを取りながら歩くよりは 急いで と言った方が的確かも知れない だが彼は走っ ているのだ 三人がゴールした後も必死で走る 長男の嫁さんの が んばれ の声がスマホから聞える 観衆のざわめきと拍 手が聞えてくる 彼にとって 勝つ ことではなく 今 は彼なりに一生懸命走り切ること ようやく彼のために用意されたゴールテープをきる 上 級生から着番が書かれた紙きれを渡され それを誇らし げに掲げてクラスメートの所に行き たくさんのハイタ ッチをしている もう分っているはずだ 自分とクラスメートの違い 結 果が分かり切った競走だから 不参加という選択肢もあ ったはずだ だが彼はそれに挑むというより参加した 彼にとって着番が書かれた紙切れの数字に意味はない 紙切れはそこに居て ともに 楽しんだという証し そ れが「あゆむ」の哲学なのだ 帰宅した彼は 見たよがんばったね という妻の言葉に 少し照れる 照れることを知っている十歳の男なのだ それにしても 「あゆむ」の哲学 が理解できれば 世 の中はもう少し住みやすくなるのだが ベトザタ異聞 世話になり信頼している者を その能力を妬んで裏切り 陥れようとする誘惑は私の中にあり 裏切りを正当化で きないがために 孤独となり赦しの場を求めるのだ エルサレムにベトザタという池があり その水が動くと き いち早くその水に入った者の病が治るという言い伝 えがあった 三十八年そこに横たわる男は 良くなりた いかと問われて 良くなりたい とは答えず 主よ誰も 私を助ける者がいないのです と言った 男は知っていた 病が良くなるということはこれまでの 暮らしを改めること だが三十八年そこに居たのは 男 が 惑わすものへの未練を断ち切れないということ 良 くなりたいという希望を持ちながらも 復帰したコミュ ニティーで良い状態を持続する自信がなかったのだ あなたの罪は許された とは告げられず 起き上がり床 を担いで歩けとだけ言われその通りにしたが 感謝の言 葉はなかった その後神殿で出会ったとき 良くなった のだからもう罪を犯かすな と諭されイエスだと確信 安息日に俺を癒し律法を犯したのはあの人だと密告した それから暫くしてユダが 主よ と呼び神と信じながら も裏切ったことで 磔刑により刑死したことを知る ユ ダはそのとき何と思ったか 心の片隅で 主は追っ手を すり抜けることなく捕縛されたことを 男は思う ユダは裏切りで銀貨三十枚を得たが 俺の得 たものは何か ベトザタに戻らなければならないほどの 病になったわけではない 人の罪を背負い死んだのだか ら 俺の裏切りの罪は赦されたか エルサレムの 新た にできたコミュニティーを羨望し その回りを徘徊しな がら密告の虚しさを感じることが 唯一の救いなのだ (参考 ヨハネによる福音書 五章) 著者 井上英明 発行所 七月堂 発行日 2024年12月20日 A5判 112ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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Kaewの香り【新本】
¥2,200
それにしてもボクらの時代 わたしという存在が受け止めているこの「時」この「場」を、言葉という最も基本的な表現方法で、記録しているつもりでした。非常に短いかたちでの物語を、言葉そのもので直接届けられる情というよりも、映像に翻訳され、語らせるようなものを求めてきました。たとえ、それが「詩」ではなく、「描写」に過ぎなかったとしても。なるべく世代を超えてひとの心に届きやすい表現、そして外国語にも移しやすい表現、短く完結する映像・画像を介したようなものを求めて。 (あとがきより) 【作品紹介】 それにしてもボクらの時代 下りエスカレーターは遅くも速くもない ゴトン ゴトンと大きな歯車を回す 人の意思とは関わりなく動く下り階段の 無数につながれた踏板の上で キミは何を見ているのだろう パーキンソン病が進行する前にと 早々とプラスチックに入れ替えた水晶体で きっとキミは何も見ていないに違いない それにしてもボクらの時代 戦の場を戦争から経済競争に乗り換えた この地に禄を喰んでいて ボクたちは肌に血を流すことこそなかったが お互いに比較され二十四時間寝食忘れて励めと鼓舞されて 心には満杯の傷を貯え続けた ボクらは縦の評価の中に放り出された 成績も、職業も、幸も不幸も、 ボクらの心には序列がすぐ育つ 配列を探るために周りの顔色をうかがい お互いの位置を確かめて 取るべき姿勢を決めたりする 功名心がおもむろに鎌首をもたげてくる 優秀な兄や姉たちに囲まれて育ったキミは 親の関心を兄姉に奪われ いつも親の視線に飢えていた いつも人の承認を求めて息を殺していた キミの心はいつも大声で泣き叫んでいた やがて 賞賛を期待して大いなる犠牲にまで手を染めた キミは エスカレーターの上からキョロッと 「世間」を見下ろして 誰にも見られていなかったことに はじめて気がついたのかも知れない まったく 戦士には男も女もなかったのだし 著者 志田道子 発行所 七月堂 発行日 2024年12月25日 四六判 108ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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星のゆらぎに火を焚べて【新本】
¥2,050
星野灯 詩集 詩の中の「私」が、書いている「私」より少し先を歩いている。 未知な自分を詩のなかの「私」が生きようとする時、言葉の星はゆらぎ、詩は透明な比喩の秘密を語りはじめる。 ――時里二郎 星野灯さんはこれまで私家版の詩集を発行するほか、展示会や朗読会などを開催し活躍されてきた詩人です。 これまで発表されてきた作品を中心に、書き下ろしをふくめた詩集を発行することとなりました。 等身大の自分で生きて、言葉を紡いでいくということ。 だからこそ光るものがあるということをそっと教えてくれるような詩集です。 【作品紹介】 手に 宇宙の端っこにいる 海に浮かんでいて 何も掴めないまま ただ一人、夜を揺蕩う シーツの抱擁の中、頬は濡れ 言葉をまた費やす、延命のため 粗大な心なら少しの悩みも 篩にかけず流せたのでしょうか 時は泡沫、 星を美しいと賛美する者が なぜ死なねばならないのか 未だわからないままでいる 命であるということ そこに在って ここに亡い ただそれだけのことに 深い傷を手にして そのほかの何もかもを 持てないままでいる 【著者プロフィール】 星野灯(ほしの・ともる) 2001年10月生まれ、兵庫県出身 2021年神戸新聞文芸年間大賞受賞 詩の個展「街に詩があればいいのに。」(2023年) 「ポエトリーゴーランド」(2024年) 詩の朗読会「冬眠し損なった私たち」(2024年) 著者 星野灯 装画・挿絵 星野灯 帯文 時里二郎 組版・装幀 川島雄太郎 発行所 七月堂 発行 11月29日 発売 12月2日頃 四六版・並製・カバー帯付 152ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955
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一本足の少女【新本】
¥2,750
それゆけ、ポエム。/それゆけ、ポエム。(鈴木志郎康) 仕事が終わって空を見たら星が光っていた。 自分の現在位置がわからない。 いつもそうだ。 けれど今日の私は、いま自分が帰るべき場所がどこなのかをはっきりと自覚している。 それがどれだけ幸せなことなのかも。 あちこちから夕飯の支度をする音が聴こえる。 一日の終わり。 ――2023年2月26日 X(旧Twitter) 村岡由梨 【作品紹介】 少女達のエスケーピング ある夏の日、娘の眠は、 いつも通り学校へ行くために 新宿行きの電車に乗ろうとして、やめた。 そして何を思ったのか、 新宿とは反対方向の車両に、ひらり と飛び乗って、多摩川まで行ったと言う。 私は、黒くて長い髪をなびかせて 多摩川沿いを歩く眠の姿を思い浮かべた。 そして、彼女が歩く度に立ち上る草いきれを想像して、 額が汗ばむのを感じた。 それから暫くして、今度は次女の花が、 塾へ行かずに、ひらりと電車に飛び乗って、 家から遠く離れた寒川神社へ行ったと言う。 夕暮れ時の寂れた駅前の歩道橋と、 自転車置き場と、 ひまわりが真っ直ぐに咲く光景を、 スマホで撮って、送ってくれた。 五時を知らせるチグハグな金属音が 誰もいない広場で鳴り響いていた。 矩形に切り取られた、花の孤独だ。 日常から、軽やかに逸脱する。 きれいだから孤独を撮り、 書きとめたい言葉があるから詩を書く。 そんな風に少女時代を生きられたのだったら、 どんなに気持ちが清々しただろう。 けれど私は、歳を取り過ぎた。 汗ばんだ額の生え際に 白髪が目立つようになってきた。 夏の終わり、家族で花火をした。 最後の線香花火が燃え尽きるのを見て、 眠がまだ幼かった頃、 パチパチと燃えている線香花火の先っぽを 手掴みしたことを思い出した。 「あまりにも火がきれいだったから、触りたくなったのかな?」 と野々歩さんが言った。 きれいだから、火を掴む。 けれど、今の私たちは、 火が熱いことを知っている。 触るのをためらい、 火傷をしない代わりに、私たちは 美しいものを手掴みする自由を失ったのか。 いや、違う。 私はこの夏、 少女達の眼の奥の奥の方に、 決して消えることのない 美しい炎が燃えているのを見た。 誰からの許可も求めない。 自分たちの意志で 日常のグチャグチャから ひらりとエスケープする。 そんな風に生きられたら そんな風に生きられたのなら、 たとえ少女時代をとうに生き過ぎたとしても 私は。 著者 村岡由梨 発行所 七月堂 発行日 2024年11月25日 四六判 184ページ ________________________________________ ※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。 https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955