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素描画誌【新本】

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このたび七月堂より、古井フラ画詩文『素描画誌』を刊行することとなりました。
年4回、全10回の発行を予定しております。

記念すべき創刊号は、「色のない花」。

詩と散文と素描画から構成される本誌は、七月堂社内でオンデマンド機にて印刷をし、製本もスタッフにて行っています。

毎号100部の限定発行の予定ですが、創刊号は200部の発行となります。

『素描画誌』は、2020年1月に、古井フラさんが自主制作されたものが始まりとなります。

その時は、一冊で完結している雑誌でしたが、内容は同じように、詩と散文と素描で構成されていました。

コロナ禍にそれを手にし、クロッキーが訓練や習作上、修正や消すことのできないという意味において、「消すことができないということは、失敗は残り、失敗は許されている。そこでは成功も失敗も、行為においては等価である」という一文に強く心を射抜かれました。


古井さんの定義するところの「素描」には、主に線描、単色で表した絵の他に、「対象を観察した写生」「線描を主とした描画」「画材は紙と鉛筆、コンテ等」「無彩色」「基本的に決して描き直しをしない」「短時間の描画」(1~10分程度)というものがあって、古井さんの散文を読み進めると、「短時間の描画」という刹那的な瞬間に惹かれていく自分の視線に気がつきます。

時間で測れる瞬間というのは、本当はどれも、立ち上がってはすぐ過去になってしまう「点」のひとつ。

その点を、1秒とみるのか、1分とするのか、10分とするのか。
それによって出現する「瞬間の景色」は、陰影も輪郭も変わってくるのだろうと思います。

ただどの瞬間も、限られているという決まりのなかではすぐに消えてしまうものであり、それを切り取った描画は、すでに過去にあったものである、という事実とともに、しかし、今も生き生きと目の前にあり続けることの存在感と不思議さと哀しみ。

古井さんの意識のなかには、過去、現在、未来、と絶え間なく流れる時間という大きな川が流れていて、たった今、五感で感じとどめられるものを素描画にしている。

そう思ってフラさんの絵を見ると、今日という一日がどれだけ大事であるか。成功も、失敗も、大きな川の流れのなかでは小石くらいのことでしかないかもしれず、よくも悪くも手元に留めておくことはできないのだろうなと思うのです。


そんな風に形にして留めてはおけないからこそ、流れていくなかにおいてもなお、心に残るものたちと少しでも多く触れ、大事にして暮らしていきたい。

古井さんの素描画を見るにつれ、「一瞬」という目には見えない時間の流れを可視化してくれているように思い、あなたはなにを信じたいの?という問いが立ち上がってくるように感じます。

うまく答えられる日もあれば、ない日もあって、それらすべてが愛おしい瞬間だと思えるような。


描くことは、その名を消していくこと
ある花を描くことで、その花の固有名詞を消していく

この世の形をうつすこと
それはつくるというより
とどめること
そしてとどめることには
一抹の哀しみがある

素描画誌「色のない花」より



著者 古井フラ
発行所 七月堂
発行日 2025年1月22日
A5判 28ページ


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https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955

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