ヒトノマ / インカレポエトリ叢書26【新本】
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田村奏天詩集
それでも、さわやかでありたいと思って
薄雪色の指
【作品紹介】
「街と暮れ方」
帰り際の夕立が街を知り尽くしている
クリーニング屋の文字がさびれて
いくつかの空白を埋めて読む
線路沿いは雑草が茂り
今にでも人類史がまっさらになるような予感
黒ずんだビルに書かれた
「ヘルス」はそれほど健康的でなく
おぞましい桃色の看板をしているが
一方で自分が口に運ぼうとしている
チューインガムも同じ色だった
(それは平穏を保つための
音から意識を背けるための
端的な逃避行)
考えれば胎内ははっきりとした
鮮烈な肉の色をしていたはずで
閉ざされた暗がりに見ていた
熱のための色
人体から発生した我々は
その色に寄せられた蛾にならざるを得まい
車窓に流れていく雨後の街を見ながら
強い空腹感を覚えて
さらにはこの街がいつからか
鉄の匂いにさらされていることを知っている
わたしは誰の信奉者にもならないので
冷静に脳が暮れていく街を解釈する
薄紫を羽織って沈みゆく太陽は
明日の雷を知らない
著者 田村奏天
発行所 七月堂
発行日 2024年4月15日
四六判 96ページ
【関連】
インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576
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