岩船【新本】
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【出版社内容紹介】
わが身はすでに 鈴虫の うつせみの灰の身ならば
いまはただこのいつくしみの思いを この枯野にしずめ 薄明の灰に帰らむ
おほかたの 常ならぬ世の 秋の果てに
1990年代に『吉田』『草庭』の二冊の歴史的な詩集を発表し、以後も世界に対しマージナルな位置で孤独に詩作を続けてきた詩人・栗原洋一の26年ぶりの新詩集。
伊予風土記の逸文をモチーフに伊予松山の伝承や神話と詩人の「現在」が往還する長歌「岩船」とその反歌「櫂ノ歌」からなる表題詩篇「岩船」、広島への原爆投下という「歴史的惨事」に対峙する「宇品まで」「厳島」「創造者」など16篇の詩を収める。
栞=稲川方人/林浩平
はるか遠い古語の文献(「源氏物語」等々)に響いているのはあくまでも「現世」に他ならない。「現世」こそが「常ならぬ世」の彼岸であることを、詩集『岩船』はわれわれに教えるだろう。
稲川方人
ハイデッガーがその詩論で唱えたように、我々は生の実存的な不安に晒されるなかで、Da「現」の根源的な顕現である「開け」を経験するために詩を書くのである。栗原氏が郷土松山の歴史の裂目に身を差し入れて、歴史事象を題材として詩を書くことこそが、自らの生を「現存在」として掴みとろうとする、のっぴきならない営為ではないだろうか。
林 浩平
著者プロフィール
栗原洋一(くりはらよういち)
1946年愛媛県松山市生まれ。詩集に『吉田』(七月堂、1990年/新版・2009年)、『草庭』(思潮社、1993年)。
目次
神野
枯葉
波動
告知
宿営地
岩船 岩船/櫂ノ歌
去年の舟
宇品まで
厳島
創造者
水
海の鏡
失踪者
鈴虫
白き象
焚火
著者 栗原洋一
発行所 書肆子午線
発行日 2019年9月30日
A5判 64ページ
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