1/2

うみのほね【新本】

¥1,650 税込

SOLD OUT

別途送料がかかります。送料を確認する

この商品は海外配送できる商品です。

己のうちに侵入した異物をやわらかい層で覆い結晶化するバロック真珠のように


この詩集のタイトルにもなっている「うみのほね」は散文で詩的小説である。
李という若者との生活を中心に描かれる自伝とも思えるような短編小説である。
(彼の虹彩は果てしなく暗い色をしていて、私の顔が写っている。その私の顔の中に彼の姿がまた映り、きっと永遠に続いているんだ。これは奇跡だ、そうじゃなかったらなんだろう。)
多くの場面の一つ一つは現実の惨い世界ではあるが、美しく豊かな情感にあふれている。
詩人白島真が跋で田中修子との出会いからその作品の全容を語っている。


「丸鏡の向こうのわが家」

うつくしい家にかえる
秋の赤みをおびた夕暮れ色のレンガをふむ
玄関にはアール・ヌーヴォー調の
金色のふちの大きな丸鏡にむかえられる

この丸鏡の前に花瓶をおき
庭に咲いた花を飾る
と、鏡の向こうの玄関にも花が咲く

(いまの季節なら手まり咲きの
 まだ緑色のところがうっすら奥にのこっている
 この株の大きくなりすぎた青い紫陽花
 おとなりにはみ出してしまいそうな枝のを)

母と父 祖母 妹と兄
すべてのあこがれがこめられたこの家の
胸に閉ざした
秘密

この家はわたしの家ではない
あのころ見捨てられたわたしはいまもどこかで
やさしいほんとうの家族に見守られながら
眠りこけているだろう

夕暮れ色の煉瓦の階段から続くバルコニー
淡いきみどりのハナミズキの葉影に
おだやかに泳ぐ甕のめだかたち
白いドアをひらき
金色のアール・ヌーヴォー調の鏡

ただいま


著者 田中修子
発行所 七月堂
発行日 2019年04月27日
四六判変形 並製 カバー付 165ページ


________________________________________

※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。
https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955

商品をアプリでお気に入り
  • レビュー

    (277)

  • 送料・配送方法について

  • お支払い方法について

¥1,650 税込

SOLD OUT

最近チェックした商品
    同じカテゴリの商品
      セール中の商品
        その他の商品