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てばなし【新本】

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古屋朋第二詩集


古屋朋は見えない震えを聞き、
命の神秘をみつめ、生きることの始まりへと潜ってゆく。
記憶の水底からうまれる無数の輝きをどこまでも澄んだ言葉に変えて。
――峯澤典子


【作品紹介】
星のうまれる

[……]

ないものをあるものとする
あるものをないものとする
あとすこしで眠れそうな夢のなかから
夜の雨音が膨張して
ふちどるまつげを意識する
窓があいていた
足の裏につめたい風
骨でも肉でもない
ぼくの身体にある通り道に
湿った酸素が吹き抜けていく
カーテンのすきまからみえたひとつ星の
点滅にあわせてまた音がする
指のあいだから 天井のどこかから
とぎれとぎれに聞こえる
かわいた音にあわせて
小さな星たちが
はじけては消え
上へ上へと
すいこまれていく
うまれたのはこの星で
星はうまれる ぼくらのなかで



【著者プロフィール】
古屋朋(ふるや・とも)
一九九一年北京市生まれ、東京都育ち。
早稲田大学大学院文学研究科修了。
『ユリイカ』今月の作品掲載(「ひとつゆび」「とける海」)。
文芸同人『プラトンとプランクトン』参加。
詩集『ひとつゆび』(書肆子午線・2020)



著者 古屋朋
発行所 七月堂
発行日 2022年9月11日
四六判 102ページ


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