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本詩取り【新本】

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近代の独創性神話を疑う

「本詩取り」は、僕の造語です。もちろん、和歌の「本歌取り」から作りました。この詩集では、全篇が例外なく「本詩取り」の技法で作られています。
 「本詩取り」は、僕が新たに試みた作詩術の名称ですが、これは単なる小手先の技術にとどまるものではありません。新しさを追求してきた現代詩は、なぜ袋小路に入ってしまったのか。長い詩歌の歴史の中で、日本の詩は今後どのような方向に進むべきか。この本質的な問いに対し、僕なりの回答を提出したのが「本詩取り」です。(著者「本詩取りについて」より)

「有名な和歌や物語の一節を自分の言葉として応用することは、日本では正当の技法でした」と語る著者、西原大輔の日本の詩と、その未来への思いが凝縮された一冊。古きを知り、新しきを知る。過去の古典詩歌への敬意を示し、未来へ進んでいく。著者の情熱を写し取ったかのような鮮烈な造本にも惹きつけられるだろう。

「午睡(ごすい)」
夏の日暮れに目覚めれば
郷愁(ノスタルジア)の薄明かり
遠い記憶の天井に
亡き祖父祖母の声を聞く
―― 中原中也「朝の歌」改編

「古い恋の歌」
生臭い青春が去り
美しい記憶が残る
恥もなく歌っているのは
赤錆びた恋愛ばかり
―― 萩原朔太郎「題のない歌」改編

「壜を投げる」
大海原のデッキから
壜の手紙を投げ入れる
まるで詩人が詩を書くように
誰かに届けと投げ入れる
―― パウル・ツェランの言葉改編

「初めて本を出した頃」
もうこれで死んでも良いと
あの時は思ったのだが………
人生は明日へ続く
明日へのきりのない夢
―― 広島カープ応援歌改編


著者 西原大輔
発行所 七月堂
発行日 2018年1月31日
A6判 上製・函付 231ページ


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