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二見遼詩集
存在という欠落を、愛することなどできませんでした
【作品紹介】
コペルニクス
おまえとわたしの孤独がけっして重ならないから
ぼくはあなたと手を取って回転し
えいえんを願うことができるのだと思う
あるいはきみの存在が否定されて
こくいっこく
砂塵に還る
そうしてわたしはあなたを祈る
睫毛の生え際をつつむまどろみを見つめ
ほそい葉のこすれる音を聞いた
とおくから近づいてくるものの正体をぼくは知っているけれど
それをきみにはなすことはないだろう
なすすべもない渇きに背を向けて
必要があるならばゆったりとしたきみの髪を抱えて逃げ出そう
痛みはかすかにまたたく
いつの日か近づくことができたなら
それはなんとおそろしくあたたかな夜明けであるか
抱きあい燃え落ちる一瞬の閃光
つかれはて爛熟した旅の終わりと
解き放たれた生命の胞子
ゆきたいところなど、ほかにはもう/
ぼくはただ沈黙していようと思う
六畳一間のちいさい宇宙でおこるひめごとを
すべてゆるして、塗り固めたガラスのうちに
じっと眺めていようと思う
透明は罰のいろ
ゆらめく美徳とエゴイズムの罪のいろ
ゆるすことは、刻み込むことだ
見紛うほどに処刑者は燦然と
頭上に浮かぶ冒瀆的なほほえみを照らしている
つみびとこぞりて
彼らの音楽が流刑地へと続く
目をふさぎ、耳を劈く
最後の明滅の、尽きる音を聞く
著者 二見遼
発行所 七月堂
発行日 2021年5月31日
四六判 93ページ
【関連】
インカレポエトリ / インカレポエトリ叢書:https://shichigatsud.buyshop.jp/categories/2851576
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