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遠い声がする【新本】

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【出版社内容紹介】
「黄昏に、物好きにも、落穂拾い。拾えるものとて、少しばかり。なぜか? そうしないでは落ち着かない。陽は急速に西へと傾き、空を薄く染める。
―あれはどこ、それはどんなふうに、と往事、行き過ぎた場所と、その理由や、様子を尋ねても、いっこうに手がかりは思い出せず、漠然と不安は募るばかり。
収穫がないなら、探索をやめればよいものを、ここ数カ月ばかり、埃り臭い書斎を這い回っては、この落穂拾いを続けてきた。
もともと、死後の勲を、などと思ったわけではない。なぜだろう?
齢、九十年。「弱虫、泣き虫、疳の虫」などと自己評価していた私。ここ数年、心不全の病状は、一進一退の膠着状態を続けている。これは実に、いやなものだ。「いつだろう? どんなふうに? ピーポ、ピーポの救急車は何回目なのか? あれはどんなふうに……」と堂々めぐり。果ては「ぽっくりさん、ぽっくりさん……不智不識のうちに、どうぞ……」となるのだ。〔中略〕
だから、私は可能な限りでの逃避を企てる。どこへ? 過去か未来へである。現在は、高齢と病いによって不可なのであるし、過去と未来も動かし得ないとしても、その陰影の甘やかさへの想起や、先取りによってだ。
こうして私は、主として過去の、落穂拾いに専念する。はじめは、両親や、兄たち、そして姉妹たち、しかし先の戦争をくぐってきた家族に遺品は少なく、想像力はすぐに枯渇した。そこで、私の数少ない若書きの資料集め、すなわち、落穂拾いが始まったのだった」(本書「あとがき」より)


著者 渋谷直人
発行所 水平線
発行日 2017年9月15日
四六判 232ページ

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