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彼方人に / 水島英己【七月堂・新本】
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はるか彼方へという思いだけで
ここまで歩いて来た
はるか彼方のあなたに逢いたいと
歩いて来た
【作品紹介】
「すべなし」
いつはしも こひぬときとは あらねども ゆふかたまけて こひはすべなし
何時 不恋時 雖不有 夕方任 恋無乏(巻十一・二三七三 人麻呂歌集)
夕方になると
どうしようもなく
あふれてくるものがある
ため息でもなく
痛みでもなく
名のつけようのない泉のように
「恋はすべなし」と
人麻呂は歌い
「乏しさが 無い」と書いた
湧いて
湧いて
止まらぬもの
ついに手に負えないものとして
乏しくないということ
それは あふれつづけるということ
尽きることのない悲しみか
それとも 終わらぬ憧れか
夕方に立ち止まるたび
何かが胸の奥で波打つ
とどめる術もなく
口にすることもできず
ただ ある
すべなし
という言葉だけが
古の歌から いまへ
わたしへ
こぼれ落ちてやまない
著者 水島英己
発行所 七月堂
発行 2026年7月7日
四六判・並製・カバー・帯
110ページ
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