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ベルリン詩篇【新本】

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冨岡悦子詩集


寓意が消えてゆく風景の果て
見つめられた現代史の真意
(帯文より)


もう一飛びを
さまたげる壁が
立ちはだかっている
壁があれば
立ち止まらざるをえないが
獲物の身であれば
立ち止まるわけにはいかない
立ち止まれば 一撃だ
うまくいっても
四方の壁のなかに押し込められる
立ち止まれば 空にしか居場所はない
いや はたして
空にも居場所はないかもしれない
壁にさまたげられて
空は目白押しのにぎわいだ
追いつめられれば
柔らかい粘膜で
私は灰色の壁を 赤く濡らすのかな
もう一飛びを
さまたげる壁が
立っていて
でもそれは 柔らかい粘膜をもつ人が
だれかに命じて作らせていて
命じられた人は
狩り立てられて強いられたのかもしれず
その人にも 柔らかい粘膜があって
それを養わなければならず
壁に追いつめられて
息を切らす人間がいることなど
考える余地はなく
考える余地がたっぷりある人は
自分の柔らかい粘膜を甘やかして
四方の壁に安堵している
もう一歩を
さまたげる壁が
立っているけれど
壁の隙間が どこかに見つかるなら
無傷の皮膚のまま
住める土地に行き
空を見上げて
風に吹かれていよう
風の音に耳を澄ましていよう
(「壁が立ちはだかっている」より)


著者 冨岡悦子
発行所 思潮社
発行日 2016年6月25日
A5判 118ページ


________________________________________

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