1/1

半夏生【新本】

¥2,200 税込

なら 手数料無料の 翌月払いでOK

別途送料がかかります。送料を確認する

松井ひろか詩集

花の首を薙ぐように
殺めたくなってもなお愛し続けたい
あなたに告ぐ


ヒッチコックの映画『マーニー』の現代版を目指して書き始めたわけだが、或る「女掏摸」、或る「女ストーカー」の告白となってしまった。しかしこれは、罪に満ち溢れたアクチュアリティをどうにか生き切ろうとする私たちにとって必然の流れだったと思っている。一方で、この詩集を不器用でツンデレな半生を捧げた一途な想いの丈を語り出したひとりの女の裸像に迫る「永遠の愛」のドキュメントとして読んでいただけたら幸いである。私は青空の下にその咎をさらす覚悟だ。


【作品紹介】
つぎのベンチまで


こがね色に輝く白樺林
心奥にちろちろと炎が燻る暮れ方に
小雪が舞う
母親が鍋に火を入れ
子どもたちが家々に帰り着く刻だ
野犬の遠吠え
朽ちかけたベンチに
わたしたちは腰かける

祖国を追われた小説家 その透き徹る眼
のぞきこむと映っている
極寒の強制収容所で赤むらさき色に腫れたしもやけの足先
がん病棟で最期のちからをふりしぼり微笑む男のくちもと

しろい息を吐く
手のひらにのった粉雪を
舌で掬う
わたしはここで待っています
二度と会うことはないひとを
わたしを笑って
笑って やさしく頰をつねって
ねえ あまやかに首を絞めて
眼を醒させて
東京が薄明を迎えるころに突きつけられた現実
もう一度 死ねと言われるまで
待っていますから

北の街 郊外の夕べ
なぜ ひとりでここまで来たのだろう
つまらないひとに囚われたまま
わたしはいつまで生きるのだろう
こがね色に輝く白樺林
いずれ散ってしまうのに
どうして美しく色づくの

いま眼前にいる小説家の
清んだ瞳にわたしの眉間は射抜かれる
ながれる沈黙を
どちらからともなく破った

もう少し歩きますか
 あなたが望むなら
  つぎのベンチまで


*アレクサンドル・ソクーロフ監督ドキュメンタリー作品『ソルジェニーツィンとの対話』参照



著者 松井ひろか
発行所 七月堂
発行日 2025年7月1日
130×200mm 102ページ


________________________________________

※送料の変更をさせていただく場合がございます。詳しくは以下のURLよりご覧ください。
https://note.com/shichigatsudo/n/n848d8f375955

商品をアプリでお気に入り
  • レビュー

    (342)

  • 送料・配送方法について

  • お支払い方法について

¥2,200 税込

最近チェックした商品
    同じカテゴリの商品
      セール中の商品
        その他の商品